歴史的資料を保全し活用へ 原発被害の福島県大熊町 荒廃家屋で「文化財レスキュー」

 

古文書の保全作業や目録作りに取り組む菅井さん(左)と西村さん

 

2022/06/09 17:30

 

 福島県大熊町教委は8日、東京電力福島第一原発事故に伴う避難指示で荒廃した家屋の解体前に歴史的資料を救い出す「文化財レスキュー」で集めた古文書の保全作業に当たった。

 レスキューは、環境省の家屋解体や住民の片付けなどで貴重な資料が廃棄されたり、流出したりしないよう、2016(平成28)年度から取り組んでいる。これまで約2千点超の古文書を保管してきた。17世紀中頃から大正時代までの文書で、町教委は有効な活用法を検討している。

 古文書が残されていたのは帰還困難区域内にある中野家。2019年12月から2020年2月に町教委が家屋内を調べて保管してきた。中野家は江戸時代の物流拠点「熊川宿」を管轄する相馬中村藩の武士だったという。荷物の運搬、サケのやな場設置に関する資料が残されており、町教委は江戸時代浜通りの物流の解明につながる貴重な資料とみている。

 8日の保全作業は旧町公民館で行い、町教委社会教育係の菅井優士さん、連携して活動している国文学研究資料館の西村慎太郎教授、地元の文化財保護協力員ら8人が参加した。ブラシを使い、古文書のほこりを丁寧に取り除いた。文書を一枚一枚分析し、年代や内容を記録する目録作りにも取り組んだ。

 西村さんは「浜通りの物流関係の資料は戊辰戦争で失われている。貴重な資料として保存に努めていく」と語った。

 保全作業は今後も定期的に実施する。町教委はまちの歴史を後世に伝えるための資料として、一般公開など活用策を探る。

 

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