96歳、洋裁の仕事が生きがい アイデアと技で客を魅了 福島県南相馬市の井戸川フミ子さん

 

和服の生地で仕立て直した洋服とバッグを手にする井戸川さん

 

2022/09/18 09:56

 

 19日は敬老の日。福島県南相馬市原町区の井戸川フミ子さんは96歳の今も洋裁の仕事に励む。生きるために始めた洋服作りだが、いつしか生きがいになった。「仕上がった時の達成感は何事にも代えられない」と笑顔を輝かせる。

 1925(大正14)年11月生まれの井戸川さんは、静岡県浜松市で育った。太平洋戦争で焼け出され、20歳だった1945(昭和20)年2月、両親やきょうだいと共に母親の実家がある原町に移り住み、終戦を迎えた。21歳で結婚し、3人の子宝に恵まれた。三男が生まれて間もない1953年5月、夫の秀男さん=当時(35)=は仕事先の北海道で交通事故に遭い急逝した。

 3人の子どもを育てるために、若い頃に学んだ洋裁の仕事を始めた。自宅で子どもの面倒を見ながら、近くの工場の事務服作りを請け負った。腕前の良さが口コミで広がり、注文が次々、舞い込んだ。

 「生活するために必死だった」。毎日休まず、寝る間を惜しんで仕事に向き合った。生地を預かり裁断からデザイン、縫製までを手がける。看板も店舗も持たないが、仕事が途切れることはなかった。

 今でもなじみの客から洋服や小物のオーダーが来る。最近は古くなった和服を仕立て直した洋服が人気だ。生地の柄を生かし、おしゃれでかわいい服によみがえらせるアイデアと技が客を魅了し続ける。

 

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