【福島知事選 7つの生活圏は今】(2)福島県相双地域 雇用の場確保が急務 福島国際研究教育機構との連携が鍵

 

1日に入居が始まった双葉町の駅西住宅。周辺にはクレーン車などがあり、生活環境の整備が続く

 

2022/10/16 10:15

 

 次期福島県知事の任期中に大きな課題となるのが東京電力福島第1原発事故に伴う帰還困難区域と処理水処分の行方だ。

 帰還困難区域の特定復興再生拠点区域(復興拠点)の避難指示が8月に解除された双葉町。JR双葉駅西側の町営住宅「駅西住宅」の入居が始まるなど、帰還や移住に向けた動きが本格化している。ただ、週末でも人影はまばらだ。町内にまだスーパーや病院はなく、生活環境の再生に向けた課題は多岐に渡る。

 「働く場がなければ若い人は戻らない。県が町などと連携して取り組んでほしい」。避難先のいわき市から戻り、駅西住宅に住み始めた無職橋本幸一さん(62)は訴える。町内で生活しているのは自身のような退職者や、高齢者がほとんどだ。若者を中心に幅広い世代が暮らすようにならなければ、活気は戻らないと考えている。

 政府は拠点外について2020年代に希望者全員の帰還を目指す方針だ。県は帰還困難区域全域の対応の具体化を求めているが、帰還意向のない住民の土地や家屋の取り扱い、除染範囲などは不透明だ。橋本さんは「誰もが安心して生活できるようになるには、あと何年かかるのか。復興にはスピード感が欠かせない」と力を込める。

 一方、相双地域の働く場として注目を集めるのが農業だ。南相馬市小高区の紅梅夢ファームは若者を積極的に採用し、情報通信技術(ICT)を活用したスマート農業を手がける。市内鹿島区出身の遠藤義央さん(19)は「若い人に最先端農業の楽しさを知ってもらい、どんどん農業に参入してほしい」と話す。

 震災と原発事故以降は農業者の減少と高齢化が進んだ。農林業センサスによると、2020(令和2)年の市内の販売農家数は705戸。震災前の2割強にとどまる。

 それでも、相双地域への移住者増加という明るい材料がある。県の統計では2017(平成29)年度の移住は28世帯だったが、昨年度は265世帯に伸びた。遠藤さんは「若者や移住者向けの農業体験会などを増やし、間口を広げれば就農者が増えるはず」と県の役割に期待する。

   ◇  ◇

 政府が浜通りに整備する福島国際研究教育機構は本施設の立地が浪江町に決まった。県内全域への波及効果が期待されるが、その成否は機構を核とした広域連携にあるとされる。

 広野町のふたば未来学園中・高は高等教育機関と連携し、復興を担う人材の育成を本格化させている。4月には町文化交流施設「ひろの未来館」が開館し、連携する東大と早稲田大の研究室が入居した。ふたば未来学園高3年の渡辺光季さん(18)は「機構が加われば、廃炉などの課題解決に取り組む人材の育成が促進される」と話す。

 県は機構が地域と連携して県全体の復興拠点となるように取り組む方針を盛り込んだ福島復興再生計画案を決定した。ただ、機構自体が県民によく知られていないとの指摘もある。「身近な施設として捉えてもらえるようにするところから始めるのが第一」。早稲田大ふくしま広野未来創造リサーチセンターの山田美香次席研究員(54)は県による積極的な情報発信が重要としている。

◇知事選立候補者(届け出順、敬称略)

内堀雅雄[うちぼりまさお] 58 無現

草野芳明[くさのよしあき] 66 無新

 

関連記事

ページ上部へ戻る