13年ぶり地元の小高区で演奏会 福島県南相馬市の吉津さんピアノ教室 困難乗り越え

 

震災後初の演奏会を楽しみながらピアノを奏でる鈴木さん

 

2023/05/07 09:18

 

 福島県南相馬市小高区で約50年、ピアノ教室を営む吉津恭子さん(71)=いわき短大名誉教授=は6日、教室の演奏会を市内小高区の浮舟文化会館で開いた。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故以降、地元での演奏会は初。原発事故に伴う避難や新型コロナウイルス感染拡大などを乗り越えた生徒が音色を響かせた。

 小高区で演奏会を開くのは2010(平成22)年以来13年ぶり。震災当時の生徒の多くは原発事故に伴い各地へ避難した。今回の演奏会には園児から社会人までの生徒や孫弟子ら15人ほどが集まった。いわき市出身のピアニスト長瀬賢弘さんらを特別ゲストに招き、ピアノのほかホルンやフルートの演奏を披露した。

 約200人が来場。演奏に先立ち吉津さんが「震災に負けない。失ったものもあるけれど、つかんだものもある。明るい未来につながるような、成長した生徒たちの音色を楽しんでもらいたい」とあいさつした。

 震災当時、相馬高1年だった鈴木貴大さん(28)=相馬市、団体職員=は13年ぶりに演奏会の舞台に立った。被災による環境の変化から音大進学は諦めたが、今も仕事の合間にレッスンへ通い、コンクールにも出場する。力強い演奏を披露し「演奏していて『やっと戻ってきた』と感動した。多くの方に見てもらい、励みになった」と笑みを見せた。

 

関連記事

ページ上部へ戻る