福島県大熊町で12年ぶり復活 相馬野馬追の騎馬武者行列 復興進むまちに勇気と希望

 

12年ぶりに大熊町内を練り歩く騎馬武者

 

2022/07/25 18:18

 

 国重要無形民俗文化財「相馬野馬追」で、標葉(しねは)郷騎馬会に所属する大熊町騎馬会は24日、町内での騎馬武者行列を12年ぶりに復活させた。南相馬市原町区の雲雀ケ原祭場地で戦いを終えた騎馬武者が、東日本大震災と東京電力福島第一原発事故発生後、初めて地元に凱旋(がいせん)して「帰り馬行列」を繰り広げ、復興が進むまちに勇気や希望を届けた。

 町内大川原地区の町役場本庁舎を発着点に、7騎が隊列を組んだ。地区内の町道約1・5キロに、勇ましい馬の足音を響かせた。勇姿を待ちわびた町民らが大勢集まり、武勲を挙げた騎馬武者を拍手でたたえた。沿道で見守った会社員吉田幸恵さん(46)は幼い頃から古里で行列を見てきた。避難先の楢葉町から駆け付け、「感動した。夏の風物詩が帰ってきた」と感慨に浸った。

 行列を終えた後、凱旋報告を行い、初陣を飾った島和広副町長が吉田淳町長に「野馬追の歴史を大熊の地で継承していく」と力強く語った。吉田町長は「復興への大きな力となった」とねぎらった。

 今年で24回目の出陣を果たした町騎馬会長の小野田淳さん(47)は古里での行列復活を夢見てきた。「原発事故により今までとは違う光景になったが、大熊の景色に変わりはない。想像以上の人が集まってくれて感無量だ」と観衆への感謝を口にした。早くも来年を見据える。「先人が築いてきた思いを受け継いでこれからも行列を続け、若い世代に野馬追の伝統を引き継いでいく」と誓った。

 大熊町騎馬会の騎馬武者行列は原発事故発生前、町中心部の下野上地区で行っていたが、今回は2019年4月に避難指示が解除され、帰還した町民らが多く暮らす大川原地区で実施した。

 

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