ねぶた作りの伝統 絶やさない 夏祭り中止の中で四倉高生が奮闘 福島県いわき市
ねぶたの文化を残そうと、制作に励んできた生徒。後列右は指導した和田さん
2022/08/04 17:56
コロナ禍を吹き飛ばしてほしいとの願いを込め、制作した「風神ヨツバサイ」
福島県いわき市四倉町の夏祭り「四倉ねぶたといわきおどりの夕べ」が新型コロナウイルスの影響で3年連続中止となる中、地元の四倉高の生徒が地域文化を受け継ごうとねぶた制作に取り組んでいる。「伝統あるねぶたを作り、地域に元気を届けたい」。祭りでの披露はできないが、完成したねぶたは10日から15日まで道の駅よつくら港に展示する予定だ。連綿と続いた伝統を守り、後輩に技術を受け継いでいく。
夏祭りは1984(昭和59)年から続く恒例行事で、四倉高美術部は第2回の1985年からねぶたを制作してきた。制作技術は先輩から後輩へ脈々と受け継がれてきたが、3年間中止が続いたことで生徒にねぶた制作の経験者が1人もいない状況になってしまった。
「このままではねぶた制作の伝統が途絶えてしまう」。四倉町出身で幼い頃からねぶたを見てきた松本望愛さん(16)=同校2年=は美術部員や生徒会に呼びかけ、有志約10人が5月ごろから制作に取りかかった。
指導する美術部顧問の教諭和田知典さん(44)は今春、須賀川市の「長沼まつり」でねぶたを制作する長沼高から異動した。前任地では4年間、ねぶた制作に関わった。経験豊かな教員の赴任と生徒の熱い思いが実を結び、四倉高の伝統が守られることになった。
和田さんに教わりながら、角材と針金で骨組みをつくり、色つけには青森から取り寄せた専用の染料を使用するなどこだわった。約2カ月かけ、高さ約2・4メートル、幅約3メートルの迫力あるねぶたが完成した。「コロナ禍を吹き飛ばそう」との願いを込め、「風神ヨツバサイ」と名付けた。
四倉高は2026(令和8)年に市内の平商高と統合される予定だ。「統合してもねぶた制作の伝統は受け継いでほしい」との思いから、松本さんは来年も制作を続けるという。来年の夏祭りでは今年制作した「風神ヨツバサイ」と2体で町に繰り出したいと夢を膨らませる。
展示では過去の祭りに登場したねぶたやねぷたも展示される。時間は午前9時から午後6時まで。