【震災・原発事故12年 復興を問う】<西村康稔経産相> 海洋放出「責任持ち判断」 原発処理水、理解醸成を一層強化

 

処理水処分の理解醸成などに向けた方針について話す西村氏

 

2023/03/08 10:29

 

 東日本大震災、東京電力福島第1原発事故発生から12年になるのを前に、西村康稔経済産業相は福島民報社のインタビューに応じた。「春から夏ごろ」とする福島第1原発の放射性物質トリチウムを含む処理水の海洋放出開始の可否の判断について「国が責任を持って行う」との考えを示した。理解醸成が不十分とされる現状に対しては「消費拡大、風評対策などはもう一段階力を入れたい」と取り組みを一層強化する方針を強調した。

 -処理水の海洋放出に向け、国は「対策はおおむね出そろった」との認識だが、漁業者を中心に理解醸成は不十分との声は多い。

 「関係者との意見交換を千回以上行っている上、新聞広告の掲載、高校生への出前授業などで安全の情報を伝えている。漁業者との車座対話で若い世代からも話を聞いた。引き続き理解が深まるよう力を尽くす。国際原子力機関(IAEA)による包括報告書が出ることなども説明していく。漁業者の事業継続に向けた基金創設、プロ野球のオープン戦での消費拡大PRなどに取り組む上、三陸・常磐ものの魅力を伝えるネットワークは現在900者以上が参加しており、経済界に協力を広げたい」

 -反対の声が大きい中でも放出に踏み切る可能性はあるのか。

 「『関係者の理解なしにはいかなる処分も行わない』と約束しており、方針を順守する。科学的根拠に基づく説明、情報発信はもう一段階力を入れていきたい」

 -放出開始の可否の判断は国、東電のいずれが行うのか。

 「理解が得られるよう努力を積み重ねた先に判断していく。(判断は)国が責任を持って行う。東電には工事に取り組み、検査を受けるなど真摯(しんし)に対応してもらう」

 -福島第1原発の廃炉作業は課題が山積している。

 「汚染水の発生量は1日約100立方メートルで対策前から5分の1となるなど状況は改善している。2号機の溶融核燃料(デブリ)の試験取り出しはロボットアーム改良などのため時期を見直したが、こうした経験は今後に生きるため全体の工程に影響はないと認識している。デブリの分析を行う『大熊分析・研究センター』の第2棟の準備も進んでおり、安全かつ着実に廃炉を進めたい」

 -原発事故被災地の産業復興や地域活性化も依然として課題だ。

 「住民の帰還促進に向けて事業・なりわいの再建などに取り組むだけでなく、交流人口も拡大させたい。福島相双復興官民合同チームも企業の販路開拓などに力を入れている。特定復興再生拠点区域(復興拠点)の避難指示解除を『復興の新たなスタート』とし、まちの再生にも注力する。福島で復興に貢献したい企業も多く、立地企業と働き手のマッチングも重要だ」

 -福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想や福島新エネ社会構想をどう具体化し、福島の活性化に結び付けるか。

 「福島ロボットテストフィールドでは新しい試みが着実に実を結び始めている。国として進出企業と地場企業のマッチングをはじめ、ドローンの長距離飛行ルートの新設など浜通りの地形を生かした開発・実証の環境整備を進める。水素ステーションや風力発電施設の設置、送電線整備なども支援する。今春スタートする福島国際研究教育機構も産業技術総合研究所などが連携しながら取り組みを全力で応援したい」

 

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