「やっぱり富岡が好き」 福島県富岡町出身の俳優佐藤杏香さん 桜並木見ながら避難指示解除を心待ち

 

旧富岡二中の前で、桜並木を見詰める佐藤さん

 

 福島県富岡町出身で俳優として活動している佐藤杏香さん(27)は満開が近づく古里の桜並木を見ながら、4月1日を心待ちにする。

 東京電力福島第1原発事故による帰還困難区域のうち、夜の森・大菅地区を中心とする特定復興再生拠点区域(復興拠点)の避難指示が解除されるからだ。実家は「桜のトンネル」で知られる夜の森地区に隣接する大菅地区にあった。

 震災が起きた2011(平成23)年3月11日は、富岡二中の卒業式だった。中学校3年間の思い出を振り返りながら、新たに始まる高校生活に胸を躍らせていた。震災と原発事故で一変。1週間後に控えた誕生日にと、祖母が注文してくれたケーキの受取票を手にしたまま、避難を強いられた。

 親戚を頼りにいわき市に移り、いわき光洋高に進学。震災と原発事故の経験を伝えたいと考え、芸能活動を始めた。改めて古里の現状を学ぼうと、福島民報社の「ふくしま復興大使」に応募した。視察先の滋賀県で高校生と交流し、刺激を受けた。多くの支援に感謝の思いを強くした。お世話になった人に感謝の伝えられるようになりたい―。

 震災と原発事故から12年が過ぎた。現在はいわき市と東京を行き来しながら、ドラマやCMの仕事を精力的にこなしている。演技力を磨き、キャリアも重ね、好きなドラマにも出演できるようになってきた。

 復興拠点の避難指示解除に合わせ、両親が自宅のあった場所に新しい家を構えた。生まれ育った場所、人と人のぬくもりにあふれている。将来、ここを拠点に芸能活動をしていきたい。

 母校・富岡二中があった場所の前に連なるソメイヨシノが咲き始め、人の流れが戻ってきた。「やっぱり富岡が好き」。古里の桜に思いを明かした。

 

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