【威風働々】伝統工芸遠野和紙・楮保存会(福島県いわき市) 手漉きの妙技 上質な一枚に
簾桁を振るい、紙漉き作業に励む高嶋さん。粘りのある「ねり」を混ぜた紙料液が波打つ
2024/03/17 09:30
ちゃぷちゃぷちゃぷ―。山あいの工房に、紙を漉(す)く小気味良い音がこだまする。いわき市遠野町で伝統産業の「遠野和紙」作りが続く。保存会の会員で遠野地区の地域おこし協力隊を務める高嶋祥太さん(38)が慣れた手つきで障子紙作りに精を出す。
コウゾとトロロアオイを原料とした粘りのある液体「ねり」を混ぜた紙料液を簾桁(すげた)ですくう。簾桁を前後に振ることで繊維同士を絡ませ、密度の高い紙に仕上げる。均一な重さの紙を作るには、ねりの分量調整が鍵を握る。天候や気温次第でねりの効き具合が変わり、職人の腕が問われる。
県の伝統的工芸品に指定されている遠野和紙は約400年以上の歴史があるとされ、最盛期には400軒ほどの農家が携わっていた。2010(平成22)年に最後の職人が廃業した後、2022(令和4)年に保存会が設立され、地域の伝統を継承しようと活動している。高嶋さんは「多くの人に遠野和紙を知ってもらい、地域の宝をつないでいきたい」と話している。
【メモ】▽住所=いわき市遠野町根岸字白幡40の1(市遠野支所内)