移籍先としての「いわきFC」 若手有望選手に高評価 良質な練習環境、体づくりや体調管理指導…
キャンプで汗を流すMF木吹。出場機会とフィジカル強化を求めて今季加入した
2025/01/23 09:26
今年でクラブ創設10周年のサッカーJ2いわきFCが、有望な若手選手の移籍先として評価を高めている。才能はあるが経験の少ない若手に質の高いトレーニング環境を提供。「日本のフィジカルスタンダードを変える」を掲げて取り組んできた10年間の積み重ねが、ポテンシャルの高い選手を呼び込む好循環を生み出している。
「常に準備しろ!」。気温16度、3月並みの暖かさに包まれた鹿児島市の県立サッカー・ラグビー場。21日に同市でキャンプインしたチームの練習で田村雄三監督(42)のげきが飛ぶ。
ひときわ目を引くのがサンフレッチェ広島ユースから今季加入した身長203センチのMF木吹(こふぃ)翔太(18)だ。世代別代表経験も豊富で広島トップチームの昇格も内定していたが、出場機会と体づくりを求めていわきでの武者修行を選んだ。「練習はきついけど、これを求めて来た」と手応えを口にする。
「体づくりに一番向き合っているチームだし、うちに来れば必ず変わるということは選手に話している」。クラブ創設時から強化やスカウトを担当する元Jリーガーの平松大志さん(41)は語る。
チームは近年、世代別代表経験のある若手を育成型レンタルで多く獲得。2023(令和5)年は鹿島アントラーズユースからMF下田栄祐(当時18)、2024年はセレッソ大阪からMF西川潤(同21)らが加入した。いずれも才能あふれる若手ながら、出場機会が少なかったりけがに悩まされたりしていた。
チームでは秋本真吾スプリントコーチ(42)=大熊町出身=やメジャーリーグでも指導経験がある友岡和彦コーチが体づくりをたたき込む。食事も徹底して管理。定期的な血液検査で栄養状態を調べ、選手への最適な負荷を調べる遺伝子検査も行う。特に食事管理の部分は、高卒直後の選手など自分の体調管理に慣れていない若手がプロに求められる「リテラシー」を学べる場でもある。
レンタル選手の所属元へのフォローも手厚く、年3回、いわき側が筋力、スピード、技術の3要素を数値化して共有。大卒後にいわきに加入し、J1クラブへステップアップした選手も多く、こうした育成と成果の積み重ねが新たな才能にいわきを選ばせる理由になっているという。
平松さんは選手の成長と勝利は相関関係にあるとし、「これからもわれわれは勝つために若く、意欲的で、ポテンシャルのある選手を取っていく」と強調した。
■練習試合社会人チームと1―1
いわきFCはキャンプ2日目の22日、鹿児島市の県立サッカー・ラグビー場で社会人チームのヴェロスクロノス都農と練習試合を行い、1―1で引き分けた。
試合は30分を2本行った。いわきは1本目の試合開始直後に失点したが、その後、ペナルティーエリア付近でボールを受けたFW熊田直紀が振り向きざまに左足で得点した。FW谷村海那は「練習試合が続くので、しっかり得点して調子を上げていきたい」と切り替えた。