AIで音声変換迅速化 福島県広野町のベンチャー「パラキート」 電話案内などに活用期待 「対話さらに快適に」
コミュニケーションを楽しく、円滑にしたいと話す中村さん。AIコンシェルジュを試験稼働している
2025/01/30 10:42
福島県広野町のベンチャー「Parakeet(パラキート)」は人工知能(AI)を活用し、人の声を別人のさまざまな声に変換できるボイスチェンジャーソフトを従来より迅速に作動させることに成功した。企業での電話案内、音楽制作など多様な分野での活用が期待できる。代表を務める東大大学院情報理工学系研究科博士課程3年の中村泰貴さん(28)=福島県いわき市出身=は「コミュニケーションをさらに快適に、楽しいものにしたい」と意気込む。
ソフトの名称は「Paravo(パラボ)」。一般的なスマートフォンやノートパソコンでも声を入力してから別の声の音声が出るまで0・1秒を切る。従来のソフトではできないスピードを実現させた。年齢や性別、キーの高低、キャラクターの違いなど109通りの声が登録され、それらをブレンドすれば無限の種類の声に変えられる。
動画配信者らによって使い勝手のよさが広がり、提供数は約6万ダウンロードに達した。東大など音声合成を専門とするメンバーで開発を進めている。
中村さんは福島高専を卒業し、東大に編入した。耳が聞こえにくかった祖父と接する経験からコミュニケーションの分野に興味を抱き、人工知能(AI)による音声合成の道を進んだ。2022(令和4)年、人気歌手松任谷由実さんが、デビュー初期の自分自身とデュエットする企画の曲を発表した際、かつての歌声の再現に携わった。この企画に臨むに当たり現在の会社を起業した。
浜通りで起業する若者を支援するHAMADOORI13と東日本大震災復興支援財団の「フェニックスプロジェクト」に採択された。今後は電話やオンライン上で声色を自分好みに調整できる「声のメイク」などへの活用を見据える。中学2年で東日本大震災を経験し、古里への思いは強い。「浜通り発の技術を世界に発信し、地域の復興に貢献したい」と語る。
■AIコンシェルジュ 広野町役場に設置へ
パラキートと広野町は町役場に庁内案内「AIコンシェルジュ」を置く。同社の音声合成、音声変換技術を用い、モニター上の町イメージキャラクター「ひろぼー」が相手と会話して案内する。2月中旬の稼働へ試験稼働中だ。町は業務効率化やサービス向上を期待する。中村さんは「足を運ぶ理由になるほど楽しんで使ってほしい」と話す。