福島県内地域医療偏在解消図る 指導医県外から招聘へ
県は二〇二一(令和三)年度、南会津や相双など医師が不足している地域の医療機関に、県外から常勤の指導医を招聘(しょうへい)し、若手医師の専門医研修を通じて、医師の地域偏在を解消する事業を始める。東日本大震災と東京電力福島第一原発事故の発生から十年となる中、医療提供体制の地域格差が課題となっている。新たな研修の場となる環境を整備し、若手医師の県内定着にもつなげる。
県の事業のイメージは【図】の通り。福島医大内に設けている県地域医療支援センターに、医師確保に専任で当たるコーディネーターを新たに配置する。福島医大の教員一人が、県外の医療機関に在籍する指導医の招致活動に専念する。県内勤務による待遇交渉などを含めた総合的な調整を進める。指導医の勤務先となる県内医療機関との橋渡しも担う。
確保する指導医の専門分野は今後検討するが、南会津地域や相双地域で配置を求める声が強い整形外科などを想定している。センターが各地の医療機関で不足する診療科などの情報を集約し、地域の需要にあった医師確保活動を強化する。
背景には、震災と原発事故の発生に伴い、顕著になっている県内の医師の地域偏在がある。県内病院に勤務する常勤医師数は震災前の二〇一一(平成二十三)年三月一日時点で二千十九人だった。二〇二〇(令和二)年四月一日時点では二千二百十五人と百九十六人増加している。
ただ、各地域で常勤医師数が震災前より増える一方、南会津地域では震災前の十二人から七人へと五人減少した。原発事故の影響で休止中の病院が多い相双地域では、百二十人から八十五人となり、三十五人減の厳しい現状となっている。震災と原発事故から十年となる中、県は依然として続く地域間の医療提供体制の格差是正が急務と判断した。
県内には二〇二〇年度時点で、県内での勤務義務を有する医師が約三百人在籍している。県の修学資金貸与制度を活用した福島医大の卒業生や福島県枠として自治医科大で学んだ卒業生で、貸与金の返還免除を受けるためには九年間の県内勤務が必要となっている。
こうした若手医師を新たに県外から招聘した指導医のいる医師不足地域の病院に配置することで偏在の解消を図る。
県は関連経費九千八百四十二万円を盛り込んだ二〇二一年度一般会計当初予算案を開会中の二月定例県議会に提出している。県医療人材対策室は「地方部の病院でも専門医研修を受け入れられる環境を整え、若手医師が研さんを積んだ福島県にそのまま定着できる足場を固めたい」と事業を説明する。