富岡復興見届けて 東北エンタープライズ会長名嘉幸照さん 見晴らし台建設

 富岡町の原発設備メンテナンス会社「東北エンタープライズ」会長の名嘉幸照さん(79)は、町内小浜にある自宅前に太平洋や町内を一望できる見晴らし台を私財を投じて建設している。東京電力福島第一原発事故の影響で苦しむ町民の役に立ちたいと思い立った。東日本大震災から丸十年となる十一日の完成を目指す。「帰還した人や避難先から町を訪れる人に古里の復興する姿を感じてほしい」と願っている。

 名嘉さんは一九七三(昭和四十八)年に原子炉メーカーのゼネラル・エレクトリック社の技術者として福島第一原発に赴任した。一九八〇年には現在の会社を創業し、約四十年間、福島第一原発に関わってきた。

 原発事故では、いわき市への避難を余儀なくされた。二〇一七(平成二十九)年に町の一部の避難指示が解除された後は町といわき市を行き来する生活をする。原発事故の被害者である一方、原発との共生による町の発展を信じ働いてきた立場でもある。それだけに「何か地元のためになることをしたい」とずっと思ってきた。震災十年の節目に合わせ、町民が古里の眺めをゆっくり楽しめる場所をつくる。

 丘の上にある自宅の前で昨年十二月に着工した。木造二階建てで、高さ六メートルほどの二階部分からの展望を楽しめる。庭で栽培しているワイン醸造用のブドウ畑越しに太平洋や富岡漁港、JR富岡駅周辺の整備中の街並みなどが見渡せる。ゆったり過ごせるよう、近くにトイレも設けた。

 沖縄県伊是名(いぜな)村出身で、屋根の上に同県の名工が手掛けた一対の厄よけのシーサーを置く。屋根の一部には二〇一九(令和元)年に火災に遭った首里城の破損瓦を使った。二度と災害が起きない平和な世の中になるとともに、沖縄と福島との友好が続くことへの願いを込める。

 震災から十年が経過する中、JR常磐線が全線開通し、富岡駅前周辺の整備が進むなど、震災後、長くがれきで覆われていた風景は大きく変わっている。完成した見晴らし台から、復興が進んでいく町の姿を多くの人に見てほしいと考える。「見晴らし台は町への恩返し。町に帰還できない人も、墓参りで訪れた時などに気軽に立ち寄ってもらいたい」。来訪者に町の明るい展望を感じてもらえる場になることを望んでいる。

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