収穫量確保へ対策費 凍霜害で福島県が補正予算 来年以降の防止策も

 

 福島県内で過去二番目の被害額となった四月の凍霜害を受け、県は収穫量と品質の確保、来年以降の被害防止に向けた対策費を支援する。果樹の枝せん除に要する経費、防霜ファン導入費の一部を補助するほか、市町村と連携した資材購入費の助成対象を拡大する。内堀雅雄知事が二十四日の定例記者会見で、農家支援経費五億五千八百四十六万円を盛り込んだ二〇二一(令和三)年度一般会計補正予算を専決処分したと発表した。

 枝せん除事業の補助は農地十アール当たり三万六千円で、対象は凍霜害により例年に比べて三割以上の収穫量減少が見込まれる農地。モモやナシ、リンゴなどの農地約千九十一ヘクタールと試算しており、被害があった全ての農地の約四分の三に相当する。

 霜の影響で実の付かなかった樹木は、通常よりも養分が枝に行き渡るため、枝が伸びて風通しが悪くなり病害虫発生の原因となる。このため病害虫防除などで例年よりも増加した剪定(せんてい)や農薬散布の作業の人件費などを支援するため、十アール当たりの補助額を決めた。事業費は三億九千二百八十六万円で、農林水産省の交付金を財源とする。

 この他、同じく収穫量で三割以上の被害のあった農地を対象に、今後の収穫量の確保や品質維持に必要な資材購入費を市町村と連携して補助する。県、市町村が三分の一ずつ負担し農家負担を三分の一に軽減する。

 樹勢回復のための肥料や農薬、枯れた苗の植え替えに必要な新たな苗など従来の農産物被害への対応に加え、新たに人工授粉のための花粉、霜被害防止に活用する燃焼資材を対象とする。事業費は六千六十万円を付けた。

 来年以降の凍霜害防止対策のため、被害防止効果の高い防霜ファンの導入費について、国の二分の一の補助に県独自で四分の一を上乗せする。防霜ファンの導入には十アール当たり百万円程度と高額な経費が必要で、JAなどから支援を求める声が上がっていた。事業費一億五百万円を確保した。

 県は被害農家の経営の維持安定のため、農家経営安定資金に小災害資金(令和三年四月凍霜害災害資金)を創設した。県内の金融機関と連携して低金利の資金融資を行う。二十八日以降、準備の整った金融機関から順次申し込みを受け付ける。融資額は三百万円以内、貸付利率は0・3%以内となる。

 内堀知事は記者会見で「農業者の心が折れることなく、希望を持って営農を継続できる財政支援の検討を重ねた」と述べた。

 補正予算は凍霜害に関する支援事業費に加え、新型コロナウイルス感染防止対策事業費を含め総額四十二億九千三百万円。専決処分は二十一日付。

 過去最大の被害となった一九八一(昭和五十六)年の凍霜害時には、県が四千九百万円を投じて農業者を支援している。今回は事業を拡大するなど手厚い支援とした。

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