風評対策早期提示を 福島、宮城、茨城知事自民加速化本部に 処理水放出方針

 

 東京電力福島第一原発で増え続ける放射性物質トリチウムを含んだ処理水の海洋放出方針を巡り、福島、宮城、茨城の三県知事は二日、自民党東日本大震災復興加速化本部の聞き取りに対し、政府の風評対策の不十分さや説明不足を指摘し、実効性のある具体的対策の早期提示を求めた。加速化本部は今後、全国漁業協同組合連合会(全漁連)や岩手県など利害関係者への意見聴取を進め、六月末から七月上旬にかけてまとめる政府への政策提言に反映させる。

 会合は冒頭を除き非公開で、内堀雅雄知事、村井嘉浩宮城県知事、大井川和彦茨城県知事がオンラインで参加した。 

 内堀知事は終了後の取材に対し、政府が決定した海洋放出方針について県内各方面からさまざまな懸念や反対の声が上がっている背景には「正確な情報が国内外に伝わっていないこと、具体的な風評対策が示されていないことがある」と指摘。「政府や東電が使う『万全な風評対策』とは何なのか。具体的に、速やかに提示してもらうことが重要だ」と強調し、万全な風評対策を講じても損害が生じた場合の賠償の枠組みが併せて提示されるべきとの考えを示した。 

 内堀知事は会合で、処理水処分によって直接的な影響を受ける水産業については、国が前面に立って水揚げ量の回復や適正価格で売り切る対策など生産から流通、消費に至る総合的かつ強力な対策を講じるよう求めた。農林業のブランド力のさらなる向上に向けた生産対策と流通販売対策の強化、観光業など全県域で事業者を下支えする対策の必要性も訴えたという。 

 額賀福志郎本部長は会合終了後、報道陣の取材に応じ、「各地域で政府決定について説明不足の点があると感じた。そうした点は政府に説明してもらわなければならない」との認識を示した。その上で、「それを実現させるのが自民党の責任だ。パイプ役として国の方向性が間違えることのないようにしたい」と述べた。 

 額賀氏によると三県知事からは、中国や韓国の水産物輸入規制に対し「科学的根拠に基づいた情報をしっかり発信してもらいたい」との要望や「風評被害が発生した際は、東電だけではなく国が介在する形にして安心させてほしい」と注文が出た。さらに、「具体策が提示されなければ議論が進まない」との苦情も寄せられたという。 

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