豚まん専門店「よしの」17日オープン 福島県いわき 震災、水害、コロナ乗り越え
豚まん専門店をオープンさせる吉野さん(右)と吉野さんの家族ら
2022/02/15 17:40
新店舗で提供する豚まん。県産食材を使った餡と、もちもちの生地が特徴だ
いわき市の町中華「華正楼」二代目料理長の吉野康平さん(41)は東日本大震災、2019年の台風19号、新型コロナウイルスと度重なる困難に直面しながら、17日に市内に豚まん専門店「豚饅 よしの」をオープンさせる。原動力は被災時に受けた支援への恩返しの思いからだ。
吉野さんが作る豚まんはゴロゴロした食感の餡(あん)とふわふわの生地が特徴。具材は大きくカットした県産の豚肉とタマネギのみで、「素材の味で勝負」という思いがこもっている。震災と東京電力福島第一原発事故がきっかけで生まれた商品で、風評被害に苦しむ地元農家の存在を知った吉野さんが店の肉まんを改良して今の味にたどりついた。
台風19号では華正楼そばの夏井川が決壊し、一階部分が約2メートル浸水した。創業から40年間守ってきた醤油ダレや秘伝のみそを失い閉店も頭をよぎる中、友人らが連日のように店を訪れて復旧作業を手伝ってくれた。毎日感謝で泣きながら作業し、2020年1月に店を再開させた。
ただ、再開もつかの間、新型コロナの影響で同年4月からは営業を自粛。吉野さんはこの間、「支援への恩返しにもなるし、困ってる人たちに豚まんを届けよう」と思い、市内の病院4カ所に約500個を届けた。医療スタッフを励まそうと、「コロナはにくんでも、豚まんはにくまんで下さい」とギャグを書いたカードを同封したところ、新聞などで取り上げられ大きな話題に。昨年だけで約1万6千個が売れた。
専門店を構想したのはこうした需要に応えるためだ。現在作れる量は1日150個が限界だが、新店舗では300個まで増える見通しだという。
今、吉野さんが豚まんに使うキャッチフレーズは有名スパイ映画をもじった「いわきより愛をこねて」。少しでも多くの人に感謝と愛が届くよう、今日も豚まんを作り続ける。