福島発の実話アニメ映画に 「とんがり頭のごん太―2つの名前を生きた福島被災犬の物語―」 犬と飼い主の絆描く

 

2022/04/03 09:45

 

 東京電力福島第一原発事故に伴う避難で離れ離れになってしまった福島県浪江町の犬と飼い主の実話がアニメ映画になる。タイトルは「とんがり頭のごん太―2つの名前を生きた福島被災犬の物語―」。5月の完成を目指し製作中で、6月3日に公開する予定。引き裂かれても温かい記憶を忘れず再会した絆、無償の愛で支えたボランティアの心を描き出し、福島発の感動の物語を発信する。

 映画はノンフィクション「とんがりあたまのごん太」(仲本剛著、光文社刊)が原作で、浪江町で生まれ育った犬のごん太を巡るストーリーとなる。飼い主・富田清の家族は、東日本大震災と原発事故で泣く泣くごん太を故郷に置いて避難する。その後、ごん太を保護した動物愛護ボランティアのスタッフらがごん太と飼い主を再会させようと奮闘する。

 映画の主人公になるのはボランティアスタッフの吉野由紀。見返りを求めず、犬の保護活動に尽力する大学生だ。映画では吉野を中心とした関係者の善意の広がりや、被災者に勇気を与えたごん太と飼い主の歩みに焦点を当てる。

 福島県出身の俳優が声優として加わり、後押しする。郡山市出身の俳優斉藤暁さんがごん太の飼い主・富田清、いわき市出身の俳優神尾佑さんが富田清の長男正樹の声をそれぞれ担当する。主人公吉野由紀の声は、アニメ「進撃の巨人」などで活躍する声優の石川由依さんが務める。

 監督と脚本は西沢昭男さん。アニメ映画やドキュメンタリー映画などを手掛けてきた経験を持つ。本作はアニメ映画4作目。西沢さんは「被災された多くの人々、生き物たち、そして支援した人たちにこの映画をささげたい」とコメントしている。

 ワオ・コーポレーションの製作。福島民報社のほか、光文社が協力する。福島県、浪江町、双葉町、葛尾村などの後援。福島民報社は映画PRなどを行う。

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 映画は福島市のフォーラム福島や東京都のヒューマントラストシネマ渋谷で公開される予定。

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 原作本「とんがりあたまのごん太」は震災や原発事故で避難を経験した県民の心情を細かく描写している。

 浪江町で中華料理店「宝来軒」を経営していた故石沢茂さんとその家族が避難する経緯、ごん太を保護したボランティアの奮闘、石沢さんとごん太の再会時の様子などを丁寧な筆致でつづっている。

 茂さんの長男・佳弥さん(53)は「(映画化は)古里での生活や隣人との触れ合いなどが記録として残るのでうれしい。故郷や家族との時間など何げない日常がいかに尊いか、感じてほしい」と話した。

 映画製作会社の担当者は「映画では中華料理店を食堂に置き換えるなど細かな設定変更はあるものの、原作の主軸に添って再現する」と意気込みを語った。

 

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