浪江の酒造り 新たな一歩 全国新酒鑑評会初出品の鈴木酒造店 福島県浪江町
浪江町の鈴木酒造店で来年の金賞獲得を誓う鈴木さん
2022/05/26 17:40
金賞を獲得した鈴木酒造店長井蔵「一生幸福」のラベル
2021酒造年度(2021年7月~2022年6月)の全国新酒鑑評会に、東日本大震災の津波で被災した浪江町の鈴木酒造店が、古里で酒造りを再開してから初めて出品した。「浪江でまた酒を出せた。それだけで意義があった」。入賞は逃したが、専務の鈴木荘司さん(45)は確かな一歩を踏み出せた喜びを口にした。一方、震災後に避難した山形県長井市で経営する鈴木酒造店長井蔵が出品した「一生幸福」は五年ぶりの金賞に輝いた。
沿岸部の請戸地区にあった鈴木酒造店は震災の津波で蔵が流され、長井市で廃業する酒蔵を譲り受けて再出発した。昨年3月に道の駅なみえに酒蔵を構え、長井市に加えて約10年ぶりに古里でも酒造りを始めた。
再開して間もなかった昨年は、全国新酒鑑評会への浪江からの出品は見送った。準備が整った今年は出品を決意。銘柄は地元の漁師や多くの町民らに親しまれてきた「磐城壽(いわきことぶき)」を選んだ。
1月から仕込みを開始した。安全性やおいしさをアピールしようと、町内で栽培したコシヒカリや水を使い、「地元産」にこだわった1本に仕上げた。
磐城壽の入賞は届かなかったが、来年に向けて技と質を磨いていく決意を抱く。「長井の方々には恩返しができたと思うが、浪江では悔しい思いをした。一口飲んで幸せだなと感じてもらえるような酒を造っていきたい」。鈴木さんの金賞獲得への挑戦は続く。