震災の月命日 亡き父に届ける全力プレー 高校野球福島大会で原町高の星主将

 

主将としてチームをまとめ上げた星選手(左から3人目)

 

2022/07/12 13:00

 

 福島市の県営あづま球場で11日に行われた全国高校野球選手権大会福島大会2回戦。東日本大震災の月命日に、津波で父を亡くした原町高の3年星到(いたる)選手(17)が主将としてチームを引っ張った。試合には1―2で惜敗したが、「成長した姿を天国から見ていてくれたと思う」と流れる汗を拭った。

 父勝(まさる)さんは少年野球の指導者だった。幼稚園の頃、一緒にキャッチボールをして笑い合った遠い記憶がある。2011(平成23)年3月11日、当時41歳の父は原町区の消防団員として、海側の地域に救助に向かった。津波に巻き込まれて亡くなったと母から聞かされたが、当時はあまり意味を理解できなかった。

 「なんでうちにはお父さんがいないんだろう」とさみしさを感じる日もあったという。家族に心配をかけさせたくないと感情を表に出すことはなかった。野球に打ち込むと、不思議と嫌なことを忘れることができた。

 父のように責任感のある人間になりたいと、昨夏に主将に立候補した。個性的な仲間をまとめていくことで、頼りにされる存在になった。プレーでも、しぶとい打撃と軽快な守備でチームを救ってきた。

 高校卒業後は進学し、理学療法士を目指す。「人の役に立つ仕事がしたい」と願うのは、人を助けようとして命を落とした父の影響だ。「最後の夏、全力でやり切った。次の夢に向かって、悔いのないよう努力する」と自信に満ちた表情で誓った。

 

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