古里の海 待望の復活 福島県内各地で海開き 楢葉町の岩沢海水浴場では12年ぶり水しぶき
12年ぶりに海開きした岩沢海水浴場で水遊びをする子どもたち
2022/07/17 06:36
福島県の浜通りにある多くの海水浴場で16日、海開きが行われた。東日本大震災に伴う津波の被害を受け12年ぶりの海開きになった楢葉町の岩沢海水浴場では、町民らが古里の海で水遊びを楽しみ、夏の観光拠点の復活を祝った。いわき市の勿来、薄磯、四倉、久之浜・波立の4海水浴場は3年ぶりの開設。関係者は新型コロナウイルス感染対策を徹底しながら誘客を進めていくことを確認した。
「私たちは震災後に生まれ、岩沢の海をよく知らない。町の観光資源であるこの海をよく知り、受け継いでいく」。12年ぶりに海水浴客の姿が戻った楢葉町の岩沢海水浴場ではオープニングイベントが行われ、楢葉小の児童らが美しい海を守っていく決意を発表した。式典後、児童らが一斉に海へ走り出し水遊びを楽しんだ。
岩沢海水浴場は震災前、年間約3万人が訪れ、サーファーらの人気を集めていた。しかし、震災による津波で監視塔やトイレ、シャワー設備が損壊。砂浜に下りる階段も崩れた。東京電力福島第一原発事故に伴う避難指示を経て、2018年度から町が復旧工事を進め、再開にこぎ着けた。
16日は約300人の親子が海水浴を楽しんだ。楢葉町の会社員男性は「岩沢の海は居心地がいい」と昔を懐かしんだ。妻はサーフィンが趣味。「娘と一緒に波乗りしたい」と声を弾ませた。同町の男性は家族4人で初めて訪れた。「海は楽しいというイメージを子どもたちに持ってもらいたい。今回の海開きで地域がさらににぎわってほしい」と願った。
原発事故で一時避難指示が出された区域にある海水浴場の再開は初めてになる。松本幸英町長は「Jヴィレッジなど周辺の観光施設との連携を進め、移住定住を促進したい」とさらなる復興へ力を込めた。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で2年連続で海開きを見送っていたいわき市の各海水浴場では、コロナ対策を徹底しつつ、受け入れを進める。勿来海水浴場で海の家を運営する勿来観光事業協同組合の男性は「常連客が遊びに来てくれてうれしい」と笑顔を見せた。茨城県に近く、北関東や首都圏からの来場も多い。人が密接しないよう海の家のスペースを増やした。
同市の海開き式典のメイン会場になった薄磯海水浴場。震災と原発事故前の2010年には約26万人が訪れるなど、市を代表する海水浴場だ。地元区長を務める男性は民宿を営んでいるが、コロナ禍で売り上げは半減した。「今年こそ多くの人が来てほしい」と期待する。
夏休みを目前に控えた中での新型コロナ感染急拡大に不安の声も。市内久之浜町のホテルの代表によると、宿泊をキャンセルする客が出ているという。「今後の客足に影響しないと良いが…」と表情を曇らせた。