福島国際研究教育機構「福島県浪江町に立地」有力 県の選定、最終段階 国へ月内に提案

 

2022/08/15 09:30

 

 政府が浜通りに整備する福島国際研究教育機構の福島県による立地選定が最終段階に入り、浪江町が最有力候補地として浮上している。複数の関係筋の話で分かった。県は8月中に候補地を選定し国に提案する。国は県の意見を尊重し、9月に立地場所を正式決定する。

 

 機構は、東京電力福島第一原発事故で甚大な被害を受けた浜通りに新産業を集積する国家プロジェクト「福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想」の司令塔となる。

 主な研究分野は(1)ロボット(2)農林水産業(3)エネルギー(カーボンニュートラル)(4)放射線科学・創薬医療(5)原子力災害に関するデータや知見の集積・発信。世界レベルの研究開発や社会実装、産業化、人材育成を通じて「創造的復興の中核拠点」を目指す。国内の科学技術力、産業競争力を強化する狙いがある。

 政府が想定している機構の本施設は敷地面積が10ヘクタール程度で、東京ドーム約2個分の用地が必要になる。本施設が整備されるまでの間は仮事務所を設け、研究開発や施設整備の業務を進める。仮事務所が入居する建物の延べ床面積は千平方メートル程度としている。

 関係者の話を総合すると、立地候補地として有力視されているのは浪江町のJR常磐線浪江駅西側。浪江町は避難指示が解除された浪江駅周辺の再開発計画を進めており、駅周辺にまとまった用地を確保していることなどから利便性などの要件を満たすもようだ。機構の立地により研究や教育を軸としたまちづくりが復興の推進力になるとみられる。仮事務所の要件を満たす候補物件も町内にあるという。隣接する南相馬市には国内有数の研究開発施設「福島ロボットテストフィールド」があり、その一部施設は町内に設けられている点なども加味して判断するとみられる。

 政府方針では2023(令和5)年度までに施設基本計画をまとめ、完成した施設から順次、運用を開始する。復興庁の設置期限となる2030年度までに全ての施設を完成させるとしている。まずは来年4月に職員数十人規模の仮事務所を開設する方針。

 立地選定に当たっては、原発事故で避難指示が出るなどした12市町村を対象とした。このうち田村、南相馬、川俣、広野、楢葉、富岡、大熊、双葉、浪江の9市町が機構の立地候補地として県に提案していた。

 県は(1)研究者が安心して研究開発、教育活動に打ち込める(2)イノベ構想の効果の最大化-を立地選定の主眼とした。自然災害リスクの低さ、土地の形質、取得しやすさなどを踏まえた「円滑な施設整備」、交通や生活環境、既存研究施設からのアクセス、地元の受け入れ体制や復興・まちづくり計画などの「周辺環境」を観点に現地調査を進めてきた。

 

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