居住人口ゼロの自治体解消 福島県双葉町・復興拠点の避難解除 原発事故から11年5カ月

 

避難指示が解除され、JR双葉駅前に設けられた扉をくぐる人たち=30日午前0時15分ごろ

 

2022/08/30 09:10

 

避難指示解除を前に、復興を願ってJR双葉駅前で行われたキャンドルナイト

 

 

 政府は30日、東京電力福島第一原発事故に伴う帰還困難区域のうち、双葉町の特定復興再生拠点区域(復興拠点)の避難指示を解除した。原発事故から11年5カ月を経て、県内で唯一全町避難が続いていた町で居住が可能になり、全ての自治体で住民が暮らせるようになった。午前0時の解除に合わせたイベントが町内で催された。

 JR双葉駅前で町民有志らによる「おかえりプロジェクト」が繰り広げられた。約2000個のキャンドルが並び、地域を照らした。参加者がカウントダウンして午前0時に「ただいま」「お帰り」と呼びかけ合った。駅前に設置された扉が開放され、町民らが扉をくぐって帰還を祝った。主催した福田一治さん(51)は「やっと目に見える形で復興のスタートが切れた。力を合わせて新たな町を作っていきたい」と期待した。伊沢史朗町長は「今日をきっかけに一歩ずつ前に進んでいきたい」と述べた。

 復興拠点の避難指示解除は葛尾村、大熊町に続いて3例目。対象はJR双葉駅周辺など町の中心部約555ヘクタール。北東部の復興産業拠点など2020(令和2)年に先行解除された区域も合わせ、町の総面積の約15%に当たる約775ヘクタールが居住可能となった。7月末時点の町の人口は5574人で、約6割に当たる3574人が住民登録している。

 町は2011(平成23)年、全町避難し、川俣町を経て埼玉県に移り、被災自治体で唯一県外避難した。2013年、いわき市へと移った。避難指示解除に先立ち、27日に町役場新庁舎が開庁した。9月5日から新庁舎で業務を開始する。

 県内の復興拠点を巡っては、浪江町、富岡町、飯舘村が来年春の解除を目指している。

■帰還や移住・定住促進の施策が急務

 今後は住民帰還や移住・定住の促進に向けた施策が求められる。避難生活の長期化により、意向調査で帰還を考えている人は約1割にとどまる。準備宿泊の登録者数は7月末時点で延べ52世帯85人、避難指示解除まで継続的に登録したのは八世帯13人だけだ。町民のつながりをどう保つかが課題になっている。

 町は双葉駅周辺で新たなまちづくりを進める。にぎわい創出に向けた商業施設建設などを検討している。駅西側に災害公営住宅などを整備しており、10月に先行して25戸が入居予定だ。隣接地に診療所なども設ける。

 復興拠点外には7月末時点で2000人が住民登録している。政府は2020年代の希望者の帰還を目指しているが、住民から全域除染を強く求める声が上がる。町は今後も全域除染と解除に向けた具体的な施策の明示などを国に求めていく。

 

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