人生の「雨宿り」の場に 福島県相馬市の菊地将兵さん 来年5月、ゲストハウス開業へ

 

ゲストハウスの開設準備を進める菊地さん

 

2022/09/14 09:52

 

 福島県相馬市大坪の「大野村農園」代表の菊地将兵さん(36)は、市内椎木の民家を改築し、ゲストハウス「アンブレラ」を開く。来年5月開業を目指し準備を進めている。観光滞在の利用者には農園体験などで農の魅力を伝える。心の問題や家庭環境の悩みなどを抱えた若者の住み込み滞在にも対応し、自然の中で寄り添い支える場を作る。「誰もが気軽に集い、人生の雨宿りができる『傘』になりたい」と誓う。

 大野村農園では、相馬地方のサトイモ在来種「相馬土垂」など年間20種ほどの野菜や地元産飼料を使った養鶏で「相馬ミルキーエッグ」を生産する。菊地さんは高校を卒業後「地元で農業をしたい」と夢を持ち、全国各地の農家に住み込んで農業を学んだ。東日本大震災発生後に帰郷し、翌年に妻陽子さん(37)と農園を開いた。

 開業当初、人手が足りず、インターネットで住み込みボランティアを募った。当初は被災地を支援したいと訪れる人が多かったが、5年目ごろから農業や田舎暮らしに興味を持つ都市部の大学生らが増え始めた。その中には、悩みや生きづらさを抱えて住み込みで働きたいと求めてくる若者が多くいた。

 菊地さん自身も母子家庭で育った。「僕も人生で迷った経験がある。農業を通じて助けになりたい」と彼らを自宅で受け入れてきた。ゲストハウス新設で、そうした若者の受け皿を広げたいという。

 また、ゲストハウスでは月1回程度、子ども食堂を開く。さらに親世代が子育てなどの悩みを語り合えるよう「大人食堂」の開催も考えている。菊地さんは「母子家庭や貧困などに関係なく、子どもや親が心から笑ったり息抜きできる空間を作りたい」とも願う。

 改築や備品購入費を10月19日まで、クラウドファンディング専用サイト「READY FOR」で募っている。目標額は200万円。

 

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