福島県南相馬 無線の聖地に 当時、米国に惨状伝えた「原町塔」 関東大震災100年 ツアー企画、人材育成も

 

原町無線塔の頭部を前に、無線によるまちおこしに向けて語り合う井上さん(左)ら

 

2023/01/05 09:10

約200㍍と当時、東洋一の高さを誇った原町無線塔(南相馬市博物館提供)

 

 関東大震災から100年となる今年、福島県南相馬市で「無線の聖地化」を目指す活動が本格化する。震災当時、市内にそびえ立っていた原町無線塔の跡地を巡るツアーやイベントなどを市民有志が企画し、全国から無線ファンを誘客する考えだ。地域の人材育成として市内の子どもたちを対象に無線体験会を開き、国際宇宙ステーション(ISS)の宇宙飛行士とアマチュア無線で交信するプログラムへの参加も目指す。

 

 原町無線塔は1921(大正10)年に現在の南相馬市に国際無線局の送信施設として建設された。高さは約200メートルで当時、東洋一だった。関東大震災時には米国へ惨状の一報を伝える役割を果たし、約40カ国からの支援につなげた。だが、通信技術の進歩に伴い約10年で運用を停止した。その後、約50年にわたり市民からシンボルとして親しまれた。老朽化に伴い1981(昭和56)年から翌年にかけて解体された。構造物の一部が跡地に残っている。

 現在、相双地域にゆかりのあるアマチュア無線家でつくる「南相馬を無線通信の聖地にする会(MMS)」が取り組みを進めている。折しも今年は無線塔の活躍から1世紀となる。3年計画のプロジェクトの1年目と位置づけ、誘客や人材育成を具体化させる。

 ツアーは無線塔の跡地や周囲にあった副柱の基礎を巡って規模の大きさを体感したり、市博物館で無線塔にまつわる歴史を学んだりする内容を想定している。全国の無線愛好家らにアピールし、交流人口の増加を目指す。

 後世に語り継ぐ活動として、無線塔の概要や運営に関わった人々の物語をまとめたホームページを作成するなど、幅広い活動を繰り広げる。

 2月以降には南相馬市の小中学生や高校生を対象に、資格を持たなくてもアマチュア無線を無料で体験できる機会を設け、新たな学びの場とする計画を立てている。南相馬市のまちづくり活動支援事業の補助を受けて実施する。

 2025(令和7)年ごろをめどに国際宇宙ステーション(ISS)に滞在する宇宙飛行士と子どもたちが無線で交信するNASAの教育プログラム「ARISSスクールコンタクト」への参加を目指す。チャレンジを成功させ、無線の聖地として盛り上がりを生み出す構想を描く。

 MMS代表の井上昌宏さん(62)=滋賀県大津市=は「無線は防災にも役立つなど、有意義で学びもある。無線塔の働きを誇りに、見えない観光資源から地域を盛り上げたい」と、100年の時をつなぐまちおこしに夢を膨ませている。

 

■活動の参加者募集

 MMSは活動への参加者を募集している。

 無線体験会の企画や作業などの運営に関心がある人、ARISSスクールコンタクトに興味のある南相馬市内の学校などが対象。アマチュア無線の免許の有無は問わない。問い合わせは井上代表へ。

 

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