福島県大熊町と双葉町の一部 「特定帰還居住区域」に指定へ 政府 住民意向や低線量考慮

 

2023/03/02 09:52

 

 政府は東京電力福島第1原発事故に伴う帰還困難区域のうち、特定復興再生拠点区域(復興拠点)外の早期避難指示解除に向け、福島県大熊町の下野上1区、双葉町の下長塚行政区と三字行政区のそれぞれ一部を新設する「特定帰還居住区域」に指定する見通しとなった。対象地区は住民の帰還意向の強さ、放射線量の低さなどを基に両町が提案した。新年度に先行除染を開始し、生活圏を確保する。2024(令和6)年度からの復興拠点外の本格除染を見据え、避難指示解除までのモデル確立を目指す。原発事故から間もなく12年を迎える中、復興拠点外で生活再建への準備が動き始めた。

 1日、両町が各町議会全員協議会で先行除染の対象地区を国や町議会に示した。対象は【地図】の通り。両町とも昨年から政府と共同で実施している住民の帰還意向調査で、帰還希望者が多い地区を対象にした。いずれも昨年避難指示が解除された復興拠点の一部を含み、地区内の分断を防ぐ狙いもある。他の地区に比べて比較的放射線量が低く、生活インフラが一定程度整っている点も考慮した。

 具体的な除染範囲は今後、両町が住民らと協議した上で決める見込み。帰還希望者の自宅や周辺の道路など生活に必要な範囲を盛り込んだ計画を町が作成し、国に提出する。国は両町の計画を認定した上で、特定帰還居住区域として新年度に国費で除染する見通し。線量を効率よく下げる除染方法を選定し、除染から避難指示解除までの「モデルケース」を探る。両町とも今後順次、対象地区を拡大する方針。

 大熊町の吉田淳町長は全員協議会終了後、報道陣の取材に「一部の地区からのスタートだが、一歩ずつ前進している」と先行除染の意義を述べた。双葉町の伊沢史朗町長は「全域の避難指示解除を目指し、残る地域もスピード感を持って取り組みを進める」と話した。

 大熊町の下野上1区は2月1日現在、314世帯877人、双葉町の下長塚行政区は1月末現在、56世帯143人、三字行政区は294世帯735人が住民登録している。

 特定帰還居住区域は復興拠点外の避難指示を解除するための新制度。今国会に提出された福島復興再生特措法改正案に盛り込まれた。法改正案が可決、成立された後に除染開始に向けた手続きが動き出す。政府は2020年代に復興拠点外の希望者全員を帰還させる方針を明言している。

 

関連記事

ページ上部へ戻る