IoTで1人暮らしの高齢者支援へ 福島県広野町が双方向ネットワークで安否確認

 

2023/04/10 09:18

 

 福島県広野町は今年度、一人暮らしの高齢者世帯と双方向性のネットワークを結び、生活や健康に関わる情報提供と安否確認のサービスを始める。民間事業者のIoT(モノのインターネット)技術を活用する。双葉郡では、東京電力福島第1原発事故に伴う特定復興再生拠点区域(復興拠点)の避難指示が1日で全て解除されたが、長く避難指示が続いた地域では、帰還者の多くが高齢者であったり、生活環境の整備が十分でなかったりなど課題は多い。広野町の取り組みは、他の町村でも帰還への安心感を高める取り組みとして注目を集めそうだ。

 町は事業対象として、町内に住む75歳以上の一人暮らし138世帯を想定している。初年度は希望する約100世帯に導入する計画。高齢者の困りごとを解決する事業を展開しているMIKAWAYA21(本社・東京都)と提携し、各世帯に専用端末「マゴコロボタン」を配備する。コンセントにつなぐだけで、町の発信する情報が流れる。高齢者が付属のボタンを押すと、発信者側に音声を聞いたことが伝わり、安否確認につながる。

 忘れがちなゴミ出しの日や総合検診など、暮らしに役立つ情報をリアルタイムで音声配信するほか、選挙の投票日、夏祭りなどのイベント案内も提供する。健康面のサポートでは、暑い日に熱中症予防を呼びかけたり、個別に持病の服薬時間を知らせたりすることを想定。頭の体操としてのクイズの出題なども可能で、一人暮らしの認知症予防効果も期待されるという。

 町は「福祉のまちづくり」を宣言し、高齢者が住みやすい安全・安心のまちづくりを進めている。端末は、将来的に家事の代行や買い物支援、事務手続きなど高齢者の幅広い要望に応えるサービスの提供も視野に入れる。

 町は3月定例町議会の2023(令和5)年度当初予算に関連予算を計上し、可決された。4月中に希望者を募り、早ければ5月に試験的に運用を始める。遠藤智町長は「新しい生活スタイルを確立し、生き生きと暮らせる環境を提供していきたい」と語る。

   ◇    ◇   

 「地域づくり会社」を掲げる福島民報社はシニア世代が生き生きと暮らせる環境づくりを進めている。MIKAWAYA21の「まごころサポート」に関するメディアパートナーシップを結んでいる。

 

関連記事

ページ上部へ戻る