福島県双葉町に進出、浅野撚糸の事業所開所 工場やタオルショップ、カフェなど開設、地域の復興後押し

 

オープンを迎え、にぎわう浅野撚糸双葉事業所のタオル売り場

 

2023/04/23 09:28

 

「フタバスーパーゼロミル」の前で記念植樹する浅野社長(左から2人目)ら

 

 浅野撚糸(本社・岐阜県)が福島県双葉町中野地区の復興産業拠点に整備を進めてきた双葉事業所「フタバスーパーゼロミル」は22日、開所した。工場やタオルショップ、カフェなどを併設し、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故からの地域再生を目指す町の交流人口拡大と活性化を担う拠点となる。現地で竣工(しゅんこう)式を行い、社員らが復興に貢献すると誓った。

 約2万8千平方メートルの敷地に鉄骨2階建ての建物を新設した。主力商品のタオルなどを販売する直営店「エアーかおる双葉丸」がある。県内産食材を使ったパスタやドリンクが楽しめる憩いの場「キーズカフェ」も併設している。企業などが利用できる研修施設やイベントスペースも設けた。

 20台の機械を備え、糸を加工して作る撚糸(ねんし)を製造する。年間約500トンを生産する計画で、タオル「エアーかおる」や「ダキシメテフタバ」などの材料になる。特許を取得した特殊な撚糸で、軽くて柔らかな風合い、高い吸収性が特長。現場をガラス越しに見学できる。

 式には約140人が出席した。浅野雅己社長は「2019年7月に伊沢史朗町長と出会った。『まだ何もなかった町』で夢を語る姿に感銘を受け、この人と一緒にやりたいと思った」と進出の経緯を語った。ただ、当初は社員を募集しても集まらず「歓迎されていないのではと思った」と振り返った。多くの人に支えられ、「内覧会に800人以上が訪れるなど次々と奇跡が起きた。この日を迎えられ、夢のようだ」と感謝した。

 渡辺博道復興相らが祝辞を述べた。式終了後、浅野社長らが敷地内にサクラの木を植樹した。

 

■復興産業拠点、新たな地域創造に期待の声

 双葉事業所の開所を受け、関係者からは双葉町中野地区の復興産業拠点で新たな地域の創造がさらに進むとの声が上がった。竣工(しゅんこう)式に臨んだ渡辺博道復興相は「町の復興、再生が進む」と期待。事業所は物販や交流など多機能を備えた複合施設で、周辺施設は周遊の促進につながると歓迎する。一帯には今後も企業の進出が続き、将来的には福島国際研究教育機構(F―REI、エフレイ)との相乗効果も見込まれる。

 この日の双葉事業所には一般開放前から約70人が列を作った。町出身の林柏さん(73)は妻正江さん(69)と避難先のいわき市から訪れた。「町の復興のために進出してくれたと聞き、ありがたい。人が集まる場としてにぎわってほしい」と笑顔を見せた。

 双葉町は中野地区の復興産業拠点に企業などの誘致を進めてきた。これまで24件の立地協定を結び、双葉事業所を含めて16件が操業を始めた。今後も4件の操業を控える。地元区長の高倉伊助さん(67)は「この先も町の将来を考えてくれる企業が増え、地域を盛り上げてほしい」と願った。

 

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