サーフィン人口増加 福島県内の海、安定した波で人気 処理水の海洋放出 風評への懸念も

 

ゴールデンウイークにいわき市の海岸で波を楽しむサーファー

 

2023/05/09 09:43

 

 安定した波が特長の福島県内の海でサーフィン人口が増えている。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の発生後、大会誘致が進んでいる一方、政府は福島第1原発にたまる処理水を夏ごろまでに放出するとしている。サーフィン関係者は処理水自体の安全性に理解を示しつつ、風評への懸念も抱く。

 天候に恵まれたゴールデンウイーク序盤、いわき市の海岸には県内外から訪れた多くのサーファーの姿があった。同市の四倉海岸近くでサーフショップ「グローリーサーフ」を営む猪狩優樹さん(47)は「福島の海は波の宝庫。コロナ禍や東京五輪も背景にサーフィンを楽しむ人が増えている」と実感を語る。

 猪狩さんは日本サーフィン連盟福島支部長も務める。原発事故後に人が来なくなった福島の海を目の当たりにし、大会誘致などを地道に続けた。近年、県内で主要な全国大会が開催されるようになった。福島支部の会員数も増加傾向で、2022(令和4)年度は前年度から49人増の252人で東北最多だった。

 一方、処理水の海洋放出に伴う風評が今後の懸念だ。猪狩さんは「なんとなく福島の海に入るのを止めようかと思う人が出てくるのが怖い」と話す。

 経済産業省は国内のサーフィン大会や競技団体に出向き、処理水の性質や海洋放出に関して説明している。ただ、猪狩さんによると震災前はアジア圏からのインバウンド(訪日客)も多かった。中国や韓国が海洋放出に反発する中、「福島の海の安全性や楽しさを国内外にもっと発信すべきだ。国や関係機関も力を入れてほしい」と話す。

 海岸保護活動を行う一般社団法人サーフライダーファウンデーションジャパン(SFJ)は、自発的に水質調査した個人や団体に対し、調査の公表を条件に最大10万円を助成する仕組みを打ち出した。中川淳代表理事(57)は「サーフィンを含め、福島を楽しんでもらえるような施策を進めるのが風評への対策になるはずだ」と指摘した。

 

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