処理水放出をラジオで問う 福島県の相馬高1年 放送局の横山さんと植村さんドキュメント制作

 

番組の改良に向け意見を出し合う横山さん(右)と植村さん

 

2023/06/26 09:30

 

 福島県相馬市の高校1年生が東京電力福島第1原発事故を巡る課題の発信に挑んでいる。相馬高放送局の横山斎(いつき)さん(15)、植村理央さん(15)は放射性物質トリチウムを含む処理水の海洋放出を扱ったラジオドキュメント番組を制作し、放送コンテストの県大会で入賞した。7月の全国大会に進む。「被災地で暮らす自分たちが自分事として問題に向き合い、社会に伝えたい」と意気込む。

 2人は震災と原発事故の起きた2011(平成23)年3月は3歳で、相馬市で被災した。植村さんは揺れに驚き、自宅近くの畑に逃げた記憶がある。横山さんは祖母の家にいたが、詳しい状況は覚えていない。ともに復興が進む地域の様子や解決の難しい原発事故の問題を見聞きして育ち、相馬高で放送局に入った。

 NHK杯全国高校放送コンテスト県大会の各部門への出品作を話し合う中、横山さんはテーマを「処理水」に定めた。福島第1原発で出る処理水の行方に関心があったからだ。「地元には風評に苦しむ人が大勢いる。重要な問題なのに情報が広く行き渡っていない」。共感した植村さんと組み、部員らの協力を得ながら作品を仕上げた。

 作中では出版局が昨年度に1、2年生に行ったアンケートに触れ、海洋放出に「賛成」は41%、「反対」は55%だった結果を紹介。意見の異なる生徒と教諭にインタビューし、賛否の理由を聞いた。国内外の識者にも話を聞き、別の処理方法や放出に対する海外の反応も盛り込んだ。

 取材や編集を通じ、多くの学びがあった。「関係者の理解なしにいかなる処分も行わない」という政府や東電と県漁連の約束に関しては、放出賛成の人からも「理解を得る努力は続けるべき」との意見があった。漁業関係者は放出に伴うなりわいへの影響を危ぶむ思いを話してくれた。約7分間の作品の終盤には「安全であっても、理解を得ずに放出するのは反対する」とナレーションを入れた。

 横山さんは「原発事故に関する問題は今後も多くの人が考え、話し合う必要がある」、植村さんは「原発の廃炉までは数十年かかると聞く。放出は人ごとではないのだと伝えたい」と作品に込めた思いを語る。顧問の渡部義弘教諭(53)は「多方面の人から話を聞いて番組を作っていた。自主的に調べ、学んでくれた」と教え子の姿勢を評価している。

 作品は10日の県大会で優秀賞に選ばれ、7月の全国大会に出品される。漁業関係者の生の声を新たに取り入れるなど、内容を練り上げている。放送局は創作過程を撮影しており、映像作品化も視野に入れる。2人は「今後は農業者など、幅広い分野で働く人に話を聞きたい」と継続的な情報発信に意欲を見せている。

 

関連記事

ページ上部へ戻る