サル光と音で去る!? 福島県相馬市で相次ぐ食害、住宅地での目撃 新年度ドローン使用の実証実験スタート
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サルが現れた場所を示す平田さん。住宅地や畑が広がっている
2025/01/14 10:39
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福島県相馬市で新年度、官民によるニホンザルの駆除作戦が始まる。市内ではサルによる食害が増加。住宅地での目撃も相次ぎ、人への被害が危惧される。市と大日本印刷(本社・東京)がドローンを飛ばし、光と音で威嚇してサルを人里から追い払う実証実験を行う。県によると、ドローンを使ったサルの追い払いは県内初の試み。
サルの群れがいる上空でドローンを作動させ、発光ダイオード(LED)の光を動かして追い払う。実験に助言している福島大食農学類の望月翔太准教授によると、光に加え、ドローンの飛行音がサルが嫌うハチの羽音に似ていることから、飛ばすだけでも逃げるという。自然界にない光や音などを加えると、より効率的に追い払えると考えられる。市は行動や生態の把握のため、サルへの衛星利用測位システム(GPS)装着を検討している。出現地点に機体を正確・効率的に飛ばす計画だ。
企業が生活環境向上の実証事業を担う復興庁の「浜通り復興リビングラボ」で結びついた。大日本印刷はドローンの活用に高い技術力を有し、服薬配達サービスの実証実験にも取り組んでいる。
市によると、今年度のサルによる作物の被害や出没の連絡は昨年12月時点で41件に上る。2022(令和4)年度は7件、2023年度は22件と2年間で急増している。目撃情報はこれまで山上地区など山あいの地域が多かったが、近年は住宅が立ち並び市中心部に近い八幡地区で増えている。
望月准教授によると、浜通りを中心にニホンザルの分布が広がっている。耕作放棄地の増加や農業従事者の減少などが人里に下りてくる原因とみられる。豚熱の流行でイノシシの数が減り、餌の競合がなくなったのも増加につながった可能性がある。八幡地区でナシなどを栽培している田中果樹園では昨年、果実が食べられ、数十万円の被害に遭った。代表の田中富士夫さん(70)は「何とかいなくなってほしい」と切望する。
サルの駆除はわなによる捕獲が中心。ただ、猟友会員の減少や高齢化もあり、追い払いは有効な手段の一つとされる。一度追い払ったサルが再び人里に現れないか、別の人里に移る懸念はないかなど、市は効果を検証し、本格導入に向け具体策を練る。市農林水産課の片平正秀課長は「ドローンは猟銃を使えない地域でも運用できる。人に被害が出る前に先手を打ちたい」と話す。
■樹木伐採など住民も対策へ
地域住民も対策に乗り出す。八幡地区内の台町地区は昨年10月、住民を対象にアンケートを実施。収穫しない果実の樹木を伐採していいか聞き取った。回答した66世帯のうち、9割弱の58世帯が賛成した。自治会は春までに、希望した家の樹木の伐採を開始する予定。自治会長の平田定男さん(71)は「サルは賢く、ロケット花火やわなをうまく避ける。まずは、『ここに来ても餌は無い』と思わせたい。住民が安心して暮らせる地域をつくる」と決意する。複数の住民グループでサルを山まで追い込む「追い払い隊」の設置も検討している。