復興を問う~国との温度差~ 企業誘致策失う懸念 「福島県飯舘村の今」直接把握を

飯舘村が整備を進めている産業団地の予定地周辺。奥の旧相馬農高飯舘校校舎は解体される
2025/03/16 11:05
東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の発生から14年が経過した。国は夏にも復興基本方針を改定し、引き続き福島県の復興に総力を挙げるとしている。ただし産業再生や帰還・移住支援などの施策を巡り、被災地と国との温度差は広がっているとの指摘がある。風化が進んでいるのか。
「復興は道半ばだ。村の今を直接見てほしい」。2月下旬、飯舘村役場の一室で村長の杉岡誠は、対峙(たいじ)した復興庁幹部に強い口調で訴えた。胸の内には産業復興に欠かせない自立・帰還支援雇用創出企業立地補助金が見直されかねない危機感があった。「現場主義」の必要性を前面に押し出し、視察するよう要求した。
2026(令和8)年以降の復興事業の進め方の羅針盤となる復興基本方針の改定が夏ごろと固まったが、年明けから2カ月間余り、表立って議論が行われていない。例年8月末となる省庁の次年度予算の概算要求編成スケジュールを考慮すると、時間は残り半年足らず。
自民党東日本大震災復興加速化本部は、補助金の見直しについて政府提言に反映させない方向で調整しているとされる。しかし被災地の自治体は状況は流動的だとみている。見直しに向けたレールが水面下で敷かれているのではないか―。そんな疑念が渦巻く。
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村の避難指示は2017(平成29)年3月に大部分が解除され間もなく8年。村は基幹産業である農業の再生、生活環境の充実や福祉向上を優先し、産業の再生は出遅れた。村の2021年度の農業や商工業を含めた総生産額(建設業を除く)は83億円。各種復興事業があったにもかかわらず、2010年度の85・7%となっている。
状況を変えるために打ち出したのが旧相馬農高飯舘校周辺の計約11ヘクタールに整備する産業団地。自立・帰還支援雇用創出企業立地補助金により、進出企業に工場新設費を最大5分の4支援する。復興を左右する最重要事業と位置付けた。
一方、行政事業レビューで「避難指示解除後10年を一つの目安として終期を検討すべきだ」と指摘された。村の団地は避難指示解除から約10年後に完成する見込み。指摘の通り見直されれば、団地完成後の工場誘致の切り札を失う。
経済産業省関係者は産業復興に地域格差がある現状に理解を示す一方、「被災地の人手不足が深刻化する中で雇用創出を目的とした立地補助金が現状に合わないとの指摘もある」と言及する。さらに霞が関内では、他に例を見ない高い補助率の同事業について「他の災害被災地との公平性が保てない」との声もあるという。
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村は国の財政事情にも一定の理解を示す。国との交渉に当たる村担当者は「原発事故はまだ続いており、他の災害と一緒くたにできない」と強調する。
レビューが「避難指示解除から10年」とした根拠は、医療費などの減免措置の終了期間を踏まえたとみられ、減免措置と地域振興に関わる事業を同じ尺度で判断しようとしている点について村内部には「ふに落ちない」との声も少なくない。
村村づくり推進課長の佐藤正幸は「エネルギー政策は国策で、国が被災地復興に最後まで責任を持つべきだ」と語気を強めた。(敬称略)