不正上塗り、怒りの声 福島県のいわき信組顧客口座偽造 「そこまでするのか」

さらなる不正が明らかになったいわき信用組合の本店=19日午後1時20分ごろ、いわき市小名浜
2025/05/20 10:50
いわき信用組合(本部・福島県いわき市小名浜)が預金者の口座を偽造して資金流出させていた問題が明らかになった19日、元職員や顧客らからは「あってはならない不正だ」と信組のコンプライアンスに対する厳しい声が上がった。昨年11月に不祥事を発表した際に触れられなかったことへの不信感も強まっており、信頼回復への道のりは前途多難だ。
「そこまでするのか」。昨年11月に発表された不正を上塗りするような不祥事に、関係者は驚きと落胆の色を隠さない。
元職員で理事経験者の男性は「こんな不正が起きていたとは…。非常に残念だ」と沈痛な表情を浮かべた。自身の在職時に口座偽装が行われていたと聞いたことはなく、理事会で議題に上がった記憶もないという。「ルールを守るのが大前提。本当であれば、金融機関としてはあってはならない」と組織の機能不全を指摘した。
いわき市内で自営業を営む50代男性は2012(平成24)年~2013年ごろ、事業を始めるためにいわき信組から融資を受けようとしたところ、担当者が資金の着服で懲戒解雇され、事業が立ち消えになった経験がある。現在も複数の口座を所有し、口座を通して50社近くと取引しているが、「また不祥事。口座を持っている自分としては不安しかない」と吐露した。
昨年11月の発表時点で今回明らかになった偽造を公表しなかった点についても、「なんでその時に言わなかったのか」と対応を疑問視した。
総代を務めている市内の80代男性は「名前を使われた人の気持ちを考えると(このような不正をすることは)全く理解できない」と怒りをあらわにした。不正が繰り返されていたことについて、「長期政権が続いた結果ではないか」と話した。
いわき信組には、取引先や顧客から、「預金は大丈夫か」「経営は問題ないのか」などの問い合わせが相次いだという。
■有印私文書偽造・同行使の可能性も 識者
いわき信用組合は、一般の預金者の名義を無断使用して別口座を作り、その口座から架空融資をして資金を流出させていた疑いがある。福島大行政政策学類の高橋有紀准教授(刑事法学)は、一般的に預金者名の印鑑などを無断で用意して口座開設書類を偽造した上、架空融資をしていた場合は「有印私文書偽造・同行使に当たる可能性がある」と指摘している。
財務省福島財務事務所は同信組が迂回[うかい]融資を公表した昨年11月以降、信組から事実認識や発生原因、問題点などの報告を受け、内容確認を進めている。理財課の担当者は「第三者委員会の調査結果を踏まえ、必要な対応を講じる」と話した。