双葉ダルマ復興の顔に 「白河総本舗」福島県双葉町に施設整備へ 製造や販売、担い手育成

 

双葉ダルマを囲み、町の伝統文化を発信する決意を新たにする伊沢町長、渡辺社長(右)

 

2025/11/18 10:56

 

 福島県双葉町の中野地区復興産業拠点に町の伝統工芸品「双葉ダルマ」を核とした施設が誕生する。白河市の白河だるま総本舗が進出し、2028(令和10)年4月のオープンを目指して観光・交流施設を整備する。体験、物販などの機能を設けるだけでなく、担い手を育成し、だるま文化を生かした復興を進める。町内では伝統行事「ダルマ市」が催されているが、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故発生前のにぎわいには及ばないのが現状。関係者は「交流人口の拡大だけでなく、双葉が世界に誇る文化の発信の場にしたい」と思い描く。

 

 新施設の名称は「だるまランド双葉(仮称)」で、だるまの製造から販売までを一貫して手がける拠点とする。国内外から訪れた人が成形から絵付けまでを体験できるのが特徴で、全国でも珍しい試みという。双葉ダルマを展示するだけでなく完成するまでの製造工程が見学できる場も設け、双葉が誇る伝統文化を見て、学べるよう工夫を凝らす計画だ。

 作ったものは絵付けのベテランでつくるJA福島さくら女性部協議会双葉支部に卸すなど生産振興にも貢献する。双葉ダルマの特色である絵付けの技法を受け継ぐ人材育成も進める。施設の運営に当たるのは白河だるま総本舗が9月に設けた新会社「だるまランド」で、来年にも着工する計画。開所初年度は年間約2万人の来場を目指しており、被災地のにぎわい創出への効果も期待される。

 白河だるま総本舗と双葉ダルマのつながりが進出のきっかけとなった。江戸時代から300年以上にわたり双葉ダルマ市が続く中、町独自の製品作りを考えた地元の商業団体「長塚共栄会」が同社に依頼したのが約30年前。その際、総本舗13代目の渡辺守栄さん(65)が制作したのが双葉ダルマの元祖となる「ふたば福ダルマ」で、型は現在も継承されている。JAふたば女性部双葉支部ダルマ部会が考案したデザインも四半世紀以上たっても引き継がれ、地域を超えた絆の証となっている。

 従来は約2万人が訪れ、町民の心のよりどころにもなっていた新春のダルマ市だが、原発事故発生後は避難先のいわき市で続き、2023(令和5)年にようやく古里で再開した。ただ、来場者数は約3400人と最盛期の6分の1ほどにとどまる。全町避難があった地域の伝統継承、帰還・移住の促進が課題となる中、だるま文化を前面に出した拠点整備により復興を後押しする考えだ。

 17日、町とだるまランドが町役場で企業立地協定を結んだ。総本舗14代目で社長の渡辺高章さん(33)は「だるま文化を未来につなぐことは使命」と強調。「『双葉には、だるまランドがある』と言ってもらえる場所にする」と決意を語った。伊沢史朗町長は「双葉ダルマは復興のシンボル。町民の皆さんが古里を近くに感じられる施設になるはず」と期待を込めた。

 

※双葉ダルマ 太平洋と双葉町の町章を題材にした2種類のデザインがある町独自のだるまで約30年前に考案された。太平洋は青い縁取りに町の花・サクラやキジの羽が絵付けされている。町章は金色の縁取りに竹の模様を配置。本体の色は代表的な赤に加え、黄、白、黒、ピンクなどの各色がある。

 

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