畜産再興都路に拠点 酪農や和牛肥育で3000頭 福島県内最大級

 

 東京電力福島第一原発事故に伴い一時、避難区域が設定された田村市都路町に、畜産再興の拠点となる大規模な牧場が計画されていることが分かった。酪農や和牛肥育などを組み合わせ、最大三千頭を飼育する見込み。県産畜産物のブランド力向上を後押しする。県によると、実現すれば県内で最も大きな牧場となる。二〇二四(令和六)年度の一部稼働を目指しているもようだ。 

 関係者の話を総合すると、牧場整備は、農業関連団体と首都圏の畜産関連法人が計画している。ICT(情報通信技術)を活用した搾乳機器を導入するなど、最新鋭の設備をそろえる見通し。現在、飼育に必要な水源の調査などを進めているという。 

 餌には県内で生産された飼料用米の活用を検討する。原発事故で避難区域が設定された十二市町村産米を中心とした調達を想定しており、被災地の営農再開を加速する狙いがある。牛の飼育の過程でできる堆肥を農家に供給し、循環型の経営を確立する構想もある。 

 田村市都路町は震災と原発事故が発生するまでは畜産が盛んだった。農業関連団体と畜産関連法人はこうした経緯を踏まえ、都路が牛の飼育に適した環境だと判断し、進出を決めたとみられる。整備に当たっては、国が二〇二一年度に新設する補助金を活用する方向だという。 

 農林水産省が毎年二月一日時点でまとめている統計によると、二〇一九年の県内の飼育頭数は、乳牛が一万一千五百頭、肉用牛が四万七千五百頭だった。震災と原発事故前の二〇一一(平成二十三)年二月時点と比べ、乳牛は五千六百頭(32・7%)、肉用牛が二万六千七百頭(36・0%)減少している。 

 東京食肉市場の県産牛の枝肉販売価格は原発事故を境に落ち込んだままだ。最新鋭の設備で良質の牛を育てる拠点が整備されれば、地域間の競争力が増し、県産ブランド力の向上につながると期待される。県は「牧場の進出が実現すれば、福島県の畜産業の一層の復興と、担い手育成に貢献する」としている。

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