かやぶき屋根の家再現 半世紀前の大内宿を模型に いわきで展示会
宿場町の面影を残す半世紀前の大内宿(下郷町)を、三十分の一のサイズで再現した模型の展示会は二十四日、いわき市暮らしの伝承郷で始まる。制作した市内の菅野清八さん(65)は「何度も現地に足を運び、当時の資料を基にした渾身(こんしん)の作品。暮らしや時代の変化を、ぜひ感じてほしい」と話す。会期は六月六日まで。
子どもの頃から手先が器用だった。神棚を自作する菅野さんを見た友人から、かやぶき屋根の模型作りを勧められ、二十代から約四十年間、趣味で模型を作り続けている。北海道から沖縄まで、日本全国の古民家を取材し、再現した模型は約百七十点に上る。
約十年前、市内の古本屋で一九七一年発行の大内宿の調査報告書を見つけた。そこには立て替えが進む以前の姿の写真と記事が掲載されていた。街並みには宿場町だった風情が残り、屋内には当時の生活ぶりを示すいろりがあった。
「失われてしまった風景を取り戻したい」。地元住民から一九六九(昭和四十四)年当時の平面見取り図の提供を受け、二〇一七年(平成二十九)年から作業を本格化させた。間取りや内装、外装を忠実に表現し、民家や神社、仏閣など計四十八棟の模型を完成させた。
かやぶき屋根の建物は時代の変化とともに姿を消しているため、新作の展示は今回で最後だという。菅野さんは「見てくれた人が日本の原風景に思いをはせ、かやぶき屋根の古民家や文化財を大事にしてくれたらうれしい」と話している。