感染急拡大…予約殺到 福島県内コロナワクチン接種

 

 新型コロナウイルスの感染急拡大に伴い、ワクチンの早期接種を希望する高齢者が増え、県内都市部の自治体が対応に追われている。福島市は当初設定した予約枠が四日間で埋まり、十七日に急きょ追加で受け付けたが、申し込みが殺到して半日で終了した。再開時期は未定だ。市は全ての高齢者分の予約枠を確保できるとして、冷静な対応を呼び掛けている。いわき市や会津若松市でも予約を取りにくい状況が続いている。

 福島市は約八万五千人いる高齢者のうち、優先接種対象者以外の接種予約を十日に開始した。事前に確保し、「十分な量」と見込んでいた約四万七千人分の予約枠は四日間で埋まった。市内の医療機関の協力を得て約四千四百人分を追加し、十七日に予約を再開したものの、午前九時の開始直後から電話やオンラインでの予約が相次ぎ、正午までに埋まった。予約の受け付けを再開できる見通しは現時点で立っていない。

 「いつになったら予約が取れるのか…」。福島市のパート従業員菅野あや子さん(70)はため息をついた。一人暮らしでスマートフォンやパソコンを持っていない。十七日は電話を掛け続けたがつながらず、ワクチン接種の予約サポート窓口を頼ろうと市役所本庁舎を訪れた。しかし、受け付けは既に終わっていた。「早くワクチンを予約して安心したい」と切実な思いを口にした。正午すぎ、担当職員が窓口休止を告げるビラを貼った。

 市内では同日、一般高齢者の集団接種と一部医療機関での個別接種が始まった。市は六月中に高齢者全員分のワクチンを確保し、七月中の完了を目指している。

 市保健所の国分英男副所長は「県内で感染が急拡大しており、早期のワクチン接種を希望する高齢者が増えている」と背景を分析。「随時、予約枠を追加する。全員接種できるので冷静に行動してほしい」と呼び掛けている。

 いわき市はワクチンの供給量を見ながら月ごとに予約を受け付けている。いずれも開始日のうちにその月の予約枠が埋まり、市民から「電話がつながらない」「いつ予約できるのか」などと問い合わせが相次いでいる。直近では二十日から、六月分の個別接種の予約が始まる。二万人分を用意している。

 会津若松市での予約受け付けは十日に始まった。十七日までに接種対象者の約四割が予約を完了した。市は電話回線を増やしたり、受付時間を一時間延長したりして対応しているが、予約の取りにくい状況が続いている。総合コールセンターには先週一週間で計六百五十五件の苦情や問い合わせがあったという。

■キャンセル100件超 郡山 予約重複に伴い

 郡山市では、予約の重複に伴うキャンセルとみられるケースが相次いでいる。集団接種予約を受け付けている市へのキャンセルの申し出は、各医療機関での個別接種予約が始まった十日以降、百件を超えている。

 同市では集団接種と個別接種について、市と各医療機関がそれぞれに予約を受け付けているため、市民は重複して予約できる。市は「集団と個別の両方を予約した上で身近な医療機関での接種を選び、集団接種の予約を取り消しているのではないか」とみている。

 医療機関でもキャンセルが生じている。市内のある病院は十日以降、十件を超える申し出を受けた。理由は尋ねていないが、予約時に「あちこちの医療機関に電話している」と話す人もいるという。

 市はキャンセルされた分のワクチンについては、次の予約分に回している。市の担当者は「キャンセルにより職員や医療機関の事務作業の負担が増す。さらに、取り消しの連絡を忘れると接種日に大きな混乱を招く可能性がある」としている。

■接種後に陽性判明 郡山の70代男性 接種前に感染か

 郡山市は十七日、高齢者向け新型コロナウイルスワクチンの一回目を接種した市内の七十代男性の感染を確認したと発表した。男性は接種後に陽性者の濃厚接触者と判断され、PCR検査で十六日に感染が判明した。

 市によると、男性は十四日に市内八山田の集団接種会場でワクチン接種を受けた。当日は発熱などの症状はなく、予診でも問題はなかった。ただ、十一日から十三日に倦怠感があったが、申告していなかったという。

 市はワクチン接種時には既に感染していた可能性が高いとみて、男性と同じ時間帯に接種した十九人と会場の医療従事者十六人の計三十五人にPCR検査を実施する。市は「接種時に明らかな発熱などがなければ、キャンセルするかどうかの判断は難しいが、接種前に体調がすぐれない場合は接種を見送ってほしい」としている。

 県によると、ワクチン接種後に感染が確認されたのは県内で初めて。男性は県が十七日に公表した感染者に含まれている。

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