「宮城でも既に風評被害」 地元水産業者、新規取引中止も 政府の処理水作業部会

 

 東京電力福島第一原発で発生する処理水の海洋放出方針を巡り、政府は七日、関係閣僚会議ワーキンググループ(作業部会)を宮城県庁で開いた。漁業、農業、観光業の代表者は国民の理解を得られない状況での海洋放出は反対だとし「既に風評被害が出ている」と指摘。政府からの一方的な説明に不信感があるため議論を尽くすよう訴える意見も出た。宮城県は隣県の福島、茨城と連携しながら具体的な風評抑止策や賠償の枠組みを明示するよう政府に求めた。

 「政府方針決定後、県内水産業で既に新規取引の中止など風評被害が発生しているとの声がある」。海洋放出決定を受けて宮城県が設けた官民会議の水産部会はそう報告し、生産から流通、消費までの各段階での振興策を早急に示すよう求めた。宮城県漁協の寺沢春彦組合長は「海洋放出されれば(風評被害は)上乗せされて拡大する」と指摘し、原発事故に伴う日本産食品の輸入規制を全ての国・地域で撤廃してから海洋放出するべきだとした。

 次世代への水産業承継を懸念する声もあった。宮城県近海底曳網漁協の阿部幸一組合長は「孫の代まで漁業が続けられるだろうか。国策として原発を推進した国が先頭に立って対応すべきだ」と言葉に力を込めた。

 水産業だけではない。宮城県ホテル旅館生活衛生同業組合の佐藤勘三郎理事長は「海洋放出には反対だ。残念ながら風評被害は絶対になくならない」と述べ、コロナ禍で疲弊した観光業に海洋放出が追い打ちを掛けると危機感を示した。

 政府は方針決定後、関係団体などに約百三十回にわたり説明をしてきたという。これに対し、宮城県産地魚市場協会の志賀直哉会長は「何回説明しても納得が得られなければ、説明とは言えない」と批判した。宮城県ホテル旅館生活衛生同業組合の佐藤理事長は「政府は対策の有効性を説明するだけで、私たちの立場を踏まえた意見交換になっていない」として信頼関係の構築を課題に挙げた。

 村井嘉浩宮城県知事は会合の締めくくりで「福島、茨城、宮城の三県は非常に大きな関係県であり、足並みをそろえて対応していく。(国の)具体的な対応策が示されれば次のステップでさまざまな話ができる」と述べた。

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