「反対」などの意見書、福島県内9議会が可決 処理水放出の政府決定後に
東京電力福島第一原発で増え続ける放射性物質トリチウムを含んだ処理水について政府が海洋放出方針を決定した後、福島県内五十九市町村議会のうち九議会が十一日までに「海洋放出に反対」「処分方針の撤回」「慎重な対応」などを求める意見書を可決したことが福島民報社の調査で分かった。この他、十一議会は方針決定前に可決済みの意見書を堅持するとしており、少なくとも計二十議会が海洋放出に懸念を示している形だ。浜通りに限らず県内全域の議会で民意を政府に訴えようとする姿勢が鮮明となった。
福島民報社は四日から十一日まで、県内五十九市町村議会を対象にアンケートを実施した。沿岸部の浜通りだけでなく中通りや会津を含めた九議会が可決した。いわき市は漁業関係者らの理解を得た上で改めて処分方法を決定すべきとし、石川町は海洋放出方針の撤回を求めた。九議会全ての意見書で「国民の理解を得ていない」との趣旨が明記され、これまでの政府対応を批判する内容となっている。
政府は方針決定後、浜通り十三市町村と、原発事故の避難区域が設定された田村と川俣を加えた計十五市町村の議会を対象に方針の説明を行っている。相馬、南相馬、川俣の三市町議会は政府から説明を受けたが方針の内容に納得せず、意見書を可決した。
政府方針の決定後、新たに意見書を審議する「予定がない」と回答したのは三十一議会。このうち、十一議会は政府方針決定前に可決した意見書で、海洋放出への反対を表明したり、風評被害対策の不十分さを指摘したりしている。
福島市や会津若松市など八議会は六月定例会で意見書を審議し、白河市など十議会は次期定例会などで審議を予定している。大半が方針への反対や慎重な対応を求めるとみられる。広野町議会は六月定例会で意見書を審議し、否決した。
処理水を巡って政府は四月十三日、国内で処分の実績があり、トリチウム濃度の検知が確実だとして海洋放出の方針を正式決定した。方針では、残留するトリチウムは濃度を国の基準の四十分の一未満まで薄め、二年後をめどに福島第一原発敷地内から放出する。二〇四一~五一年ごろとする廃炉完了目標までに放出を終える方針。風評被害には東電が賠償対応するとしている。
◇東京電力福島第一原発の処理水を海洋放出する政府方針決定を受け、意見書を可決した市町村議会=いわき、相馬、南相馬、川俣、天栄、柳津、泉崎、石川、三春
◇6月定例会で意見書を審議する=福島、会津若松、喜多方、伊達、昭和、浅川、古殿、新地
◇次期定例会などで審議予定=白河、大玉、南会津、湯川、金山、棚倉、塙、平田、富岡、川内
◇6月定例会で意見書を否決=広野
■政府方針決定前に「海洋放出反対」などの意見書を可決しており、新たな審議予定はない=本宮、鏡石、只見、西会津、猪苗代、会津坂下、西郷、矢吹、矢祭、楢葉、飯舘
■審議予定なし=郡山、須賀川、二本松、田村、桑折、国見、下郷、檜枝岐、北塩原、磐梯、三島、会津美里、中島、鮫川、玉川、小野、大熊、双葉、浪江、葛尾