入院制限「反対」25人 容体急変を懸念 福島県内59市町村長アンケート

 

 新型コロナウイルス感染者について政府が重症者らに入院治療を制限する方針に転じた賛否について、福島民報社は福島県内全59市町村長にアンケートを実施した。軽症者や無症状者の容体急変への懸念などを理由に、25人(42・4%)が「反対」と回答した。一方で「賛成」は3人(5・1%)だった。画一的な基準ではなく、個別の状況を踏まえた柔軟な判断が必要との指摘が多かった。

 政府が新型コロナ感染者の重症者と中等症者を原則入院とし、他は自宅療養を基本とする方針を示したのを受け、調査した。16日までに全59市町村長から回答を得た。各市町村長の回答結果は以下の通り。「その他」は31人(52・5%)だった。

 「反対」とした福島県国見町の引地真町長は「症状の急変時に対応できるのか」と疑問を呈し「自宅療養者をケアする人員の確保にも課題が多い」と指摘した。

 「その他」で回答の福島県福島市の木幡浩市長は「絶対的に医療資源が不足する場合はやむを得ない部分がある」と一定の理解を示しつつ「一律に中等症以上という基準でなく、基礎疾患の有無や年代、各種検査結果など重症化しやすいリスクを踏まえて入院の判断をする必要がある」とした。

 「賛成」と回答した福島県葛尾村の篠木弘村長は、感染急拡大に伴い福島県内の病床が逼迫(ひっぱく)している現状を受け「入院を必要とする患者の救済には必要」とした上で、入院患者以外の対応も重要だと強調した。

   ◇  ◇

 菅義偉首相は日本医師会などに対し、地域の診療所による往診やオンライン診療での患者の状況把握と適切な医療の提供を要請している。地域での受け入れ体制構築が可能かどうか59市町村長に尋ねたところ、7割超となる44人が「難しい」と回答した。

 福島県会津若松市の室井照平市長は困難な理由について、通常医療とワクチン接種などの業務で地域の医療体制は厳しい診療体制が続いているとし「保健所機能を有しない市町村がコロナ患者と医療機関の調整は不可能だ」と答えた。町村長からは医療人材不足やオンライン診療体制の未整備などの理由が多かった。

 一方、「構築できる」とした福島県郡山市の品川萬里市長は既に電話診療などを始めているとし「医師会など関係団体と連携してさらに充実させる」と答えた。その上で「オンライン診療の普及が進まない要因として診療報酬の低さが指摘されている」と制度改正の必要性を主張した。

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 福島県は新型コロナ感染者を原則入院治療する方針で対応に当たってきた。ただ、感染急拡大に伴う病床逼迫(ひっぱく)を踏まえ、感染者の症状に応じてホテルでの宿泊療養や自宅療養も活用する対応も取っている。

設問1

 新型コロナの重症者と中等症者を原則入院とし、入院患者以外は自宅療養を基本とする政府方針への賛否は

▼賛成(3町村)

玉川、楢葉、葛尾

▼反対(25市町村)

いわき、喜多方、伊達、本宮、桑折、国見、川俣、只見、南会津、北塩原、西会津、猪苗代、会津坂下、三島、金山、昭和、西郷、泉崎、棚倉、鮫川、平田、広野、富岡、大熊、新地

▼その他(31市町村)

福島、会津若松、郡山、白河、須賀川、相馬、二本松、田村、南相馬、大玉、鏡石、天栄、下郷、檜枝岐、磐梯、湯川、柳津、会津美里、中島、矢吹、矢祭、塙、石川、浅川、古殿、三春、小野、川内、双葉、浪江、飯舘

設問2

 地域の診療所が往診やオンライン診療でコロナ患者の状況を把握し、適切な医療を提供する受け入れ体制の構築は可能か

▼構築できる(2市)

福島、郡山

▼構築は難しい(44市町村)

会津若松、須賀川、喜多方、田村、伊達、本宮、桑折、国見、川俣、鏡石、天栄、下郷、檜枝岐、只見、南会津、北塩原、西会津、猪苗代、会津坂下、柳津、三島、金山、昭和、会津美里、西郷、泉崎、中島、棚倉、塙、鮫川、玉川、浅川、古殿、三春、小野、広野、楢葉、富岡、川内、大熊、浪江、葛尾、新地、飯舘

▼その他(13市町村)

いわき、白河、相馬、二本松、南相馬、大玉、磐梯、湯川、矢吹、矢祭、石川、平田、双葉

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