フランス在住の画家松井守男さんが福島県双葉町で絵画制作へ

 

浅野撚糸の新工場建設現場で浅野さんとともに作品のイメージを膨らませる松井さん(右)

 

2022/05/18 09:31

 

 フランス在住の世界的画家松井守男さん(79)は、東京電力福島第一原発事故で全町避難が続く福島県双葉町に滞在し、「未来への希望」をテーマにした絵画の大作を制作する。作品は来年4月に町内の工場で一般に公開し、避難指示解除後の町への来訪者増につなげる。「双葉町から世界に希望と平和の願いを発信したい」とイメージを膨らませている。

 松井さんは17日に初めて双葉町を訪れ、作品を展示する予定の浅野撚糸(ねんし)のタオル材料製造工場建設現場や、かつての町の中心部などを視察した。荒れ果てた住宅がある一方で豊かな自然や美しく咲く花を目の当たりにした。「人や自然、家などを描きたいという思いが沸いてきた。今すぐにでも制作に取り掛かりたい」と意欲を見せた。

 松井さんは1967(昭和42)年に渡仏し、パブロ・ピカソに師事した。独創的な表現は「光の画家」と呼ばれ、2003(平成15)年に仏政府からフランスで最も栄誉があるとされるレジオン・ドヌール勲章を受けた。勲章はこれまで建築家安藤忠雄さんやファッションデザイナー・コシノジュンコさんが受章している。

 絵画制作のきっかけは、浅野撚糸社長の浅野雅己さん(62)との出会い。双葉町の復興に貢献したいという浅野さんの思いに胸を打たれたという。4月に浅野さんから作品制作を依頼され、「福島の復興や風評払拭(ふっしょく)に役立てるなら」と快く引き受けた。

 松井さんは町の一部の避難指示が解除された後の夏以降に町内で制作活動に入る予定だ。幅50メートルを超える巨大なタオル地に絵画を描く構想があるほか、町内の風景画50点ほどを制作するという。松井さんは町内に制作拠点を構えて一定期間滞在し、町民と触れ合いながら作品づくりに取り組む。作品完成後は町内で子どもが参加できるワークショップを企画し、芸術活動の場を提供する。

 17日に、いわき市の町役場いわき事務所で松井さんと意見交換した伊沢史朗町長は「さまざまな分野の人が町で交流し発信していくことで、より良い町になる。絵画を通して町に関心を持つ人を増やしてもらいたい」と期待を込める。

 松井さんは、チェルノブイリ原発があるウクライナへのロシアによる侵攻が続く今こそ、福島から希望や平和を発信する意義は大きいと考える。「日本への恩返しの気持ちを込めて制作する。世界中の人が作品を見るために双葉を訪れ、希望や平和を感じてもらえるようにしたい」と将来の展望を描いた。

 

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