福島県大熊町図書館を解体の方針 代替施設に社会教育複合施設整備を検討 跡地は帰還者向け住宅用地を計画
解体する方針となった大熊町図書館
2022/05/29 09:55
図書を譲り受ける来館者(右)
福島県大熊町は東京電力福島第一原発事故の帰還困難区域に伴う特定復興再生拠点区域(復興拠点)内にある大熊町図書館を解体する方針を固めた。跡地は住宅用地とし、帰還住民向けのアパートなどを建設する見通し。代替施設として図書館機能などを備えた社会教育複合施設の整備を検討する。
町図書館は1996(平成8)年にJR大野駅周辺に開館。町民俗伝承館を併設し、屋根の時計台も特徴だ。「読書のまち」を掲げ、蔵書は13万冊以上で県内の町立図書館では最大規模だった。周辺は6月下旬から7月上旬ごろの避難指示解除を見込んでおり、町は昨年度、建物全体の解体を環境省に申請。解体時期は未定だが、跡地は帰還者向けの住宅用地とする計画だ。
町図書館は原発事故により休館している。町教委によると、使用していない期間が長く、老朽化が進んでいる。修繕には20億円程度を要する見込みで、維持は困難と判断。解体を見据え、図書館の郷土資料など約2万冊を保存した。
解体を巡っては再検討を求める声が町内外から相次いでいる。今春から書面やインターネット上で署名活動が始まり、22日時点で計7796通の意見が届いているという。
町が検討を始めた社会教育複合施設は、図書館や博物館、公文書館、公民館の機能を持ち、大野駅周辺に整備する想定。現時点で場所や詳細は未定で、住民と話し合いながら決めていくという。28日に町役場でワークショップを開き、住民らから意見を聞いた。
町教委は「見直しの声が多いのは承知している。住民の意見をしっかり聞いて理解を得ながら施設の検討を進めていきたい」としている。
大熊町教委は5月30日まで館内を一般開放し、図書を無償で譲り渡している。
歴史や地理、教育などの図書、文庫本、絵本など約5万冊が対象。1人50冊まで譲り受けることができる。
避難先のいわき市から来館した町出身の保育士の女性は絵本や紙芝居など40冊以上を選んだ。「毎日のように通っていた忘れられない場所。解体となれば本当に寂しいが、復興のためには仕方がないと思う気持ちもある」と複雑な胸の内を明かした。
図書館は立ち入り制限緩和区域にあるため、来館の手続きは不要。開放時間は午前10時から正午、午後1時30分ら午後3時30分。問い合わせは町教委教育総務課(平日のみ)へ。