災害での歴史資料散逸を防げ 市民有志が保存組織設立 福島県相馬市
相馬市内の民家から搬出したふすまの内部を確認する専門家。右端は阿部教授、右から2人目は鈴木さん
2022/06/13 06:02
福島県相馬市内の民家などに残る歴史資料が災害で破損、散逸するの防ごうと、市内の有志がボランティア組織「そうま歴史資料保存ネットワーク」を設立した。専門家によると、住民主体で歴史資料保存に取り組む例は全国でも少ないという。会員は「歴史的に貴重な資料が眠っているかもしれず、気付かずに失われてしまうのを防ぎたい」としている。
相馬市では、最近の水害や地震で被災住宅に残っていた古文書が破損したり、家屋解体で一緒に捨てられたりするケースがあるという。ネットワークは寄せられた情報などを元に、専門家と連携して被災した建物にある資料の一時避難と整理・保存を支援する。
ネットワークは相馬市出身の日本画家鈴木龍郎さん(70)=東京都在住=が代表を務め、大学の歴史資料保存の専門家や地元の文化財や歴史関係団体、商工観光団体の有志らが設立した。鈴木さんは市中心部にある実家の古民家が地震で損壊した。「出てきた資料をどうしたらいいか分からない市民も多いはず。そうした声の受け皿も必要ではないか」と設立の意義を話す。
メンバーの一人で、県内各地の歴史資料保護活動に携わる福島大の阿部浩一教授(53)=ふくしま歴史資料保存ネットワーク代表=によると、個人所蔵の資料保全は行政の支援を受けにくいという。「新たな資料の発見や保全に向けた行政の動きの加速化にもつながるのでは」と期待する。
今後はボランティア会員を募集予定。問い合わせは、そうま歴史資料保存ネットワーク事務局(相馬商工会議所内)へ。
■民家から資料搬出
ふくしま歴史資料保存ネットワークは11日、相馬市内の民家から歴史資料を搬出する作業に取り組んだ。
阿部教授と鈴木さん、宮城県の歴史資料保存ネットワークの関係者も協力した。3月の地震で壊れた民家から古写真や書物、ふすまなどを運び、隣接のコンテナに保管した。
ワークショップとして、保管したふすまの紙を剥がして内部を確認する作業を専門家が実演した。阿部教授は「地元の会員が保存作業技術を将来的に習得できれば活動の幅も広がる」と話した。