日鷲神社の井戸90年ぶり「再建」 野馬懸の神事「水合わせの儀」復活に期待 福島県相馬市小高区
修築した井戸の完成を喜ぶ西山宮司(左)と松本騎馬会長
2022/07/20 09:32
相馬野馬追の野馬懸で使われる「御神水(おみだらし)」がくまれていた福島県南相馬市小高区の日鷲神社の井戸が約90年ぶりに”再建”された。今年3月に発生した最大震度6強の地震で倒れた鳥居を活用して修築した。野馬懸の神事として1931(昭和6)年まで続いた「水合わせの儀」の復活にも期待が高まっている。
日鷲神社と野馬懸の舞台となる同市小高区の相馬小高神社は、1323(元亨3)年、相馬藩主が現在の千葉県から相馬地方に移った際に同行し、開設されたとされる。相馬野馬追の最終日に行われる野馬懸は、裸馬を御小人(おこびと)が素手で捕まえ、神にささげる儀式で、古来の名残をとどめる。
相馬藩が江戸時代に編さんした奥相志(おうそうし)には相馬小高、日鷲の両神社の井戸水を合わせる「水合わせの儀」を行って御神水をつくり、神前にささげる馬の目印にした。理由は不明だが1931年を最後に水合わせの儀は行われておらず、以降は相馬小高神社の井戸水だけが御神水になっている。
日鷲神社の井戸水は水合わせの儀が途絶えてからは生活用水に用いられていたが、それもいつしか使われなくなり放置されていた。
今年3月の地震で同神社の鳥居が倒れた。かねて水合わせの儀の復活を考えていた西山典友宮司(69)は、倒れた鳥居の石を活用して井戸を改修した。7月初旬から工事をし17日に完成。小さな祠(ほこら)風の井戸に仕上がった。
小高郷大将を務める小高郷騎馬会長の松本充弘さん(75)も井戸の改修を喜んでいる。「水合わせの儀は伝統の姿。今後、ぜひ再現させ、後世に残していたい」と話している。
相馬野馬追は23~25日、南相馬市などで行われる。野馬懸は25日に相馬小高神社で繰り広げられる。