【双葉の選択 8月30日復興拠点避難解除】(2)移住し人の役に立ちたい 浅野撚糸に来春入社の社員 福島県双葉町

 

建設が進む新工場を前に笑顔を見せる塙さん。双葉町で多くの人の役に立ちたいと意気込む=双葉町中野地区の復興産業拠点

 

2022/08/26 09:20

 

 福島県双葉町に戻るか、避難先で暮らし続けるか。町民の心が揺れる中、福島県いわき市出身で双葉町に移り住む決断をした若者がいる。町内中野地区の復興産業拠点に進出する浅野撚糸に来春入社する東日本国際大四年の塙瑞基さん(21)だ。「これから動き始める町で人の役に立ちたい」と誓う。

 幼少期からアトピー性皮膚炎を患っている。体に触れる繊維の種類によっては肌が猛烈なかゆみに襲われ、着る服や使用するタオルには注意してきた。就職活動中に、敏感肌に優しいタオルを製造している浅野撚糸を知った。使ってみると吸水性が抜群で、肌への違和感のなさに感動した。「同じ肌の悩みを抱える人のためになりたい」。採用試験を突破し、見事、内定を受けた。

 浅野撚糸の工場は来年4月、操業する見通し。仕事に慣れるまでの間はいわき市四倉町の実家から電車通勤し、その後、双葉町に住民票を移して社宅に入居する予定だ。

 医療機関や商業施設など社会資本が不十分な地域での暮らしに不安はある。しかし町の復興計画にはJR双葉駅東側に商業施設の整備が明記されており、車を使えば日常生活には困らないはずと考えている。

 浅野撚糸は来春、塙さん以外にも県内から中途も含め10人を採用する方針。岐阜県安八町の本社からも10人程度が双葉町に移住する。同社以外にも町内で企業立地が進めば、塙さんは住民が徐々に増えると期待している。アパレルメーカーのフレックスジャパン(本社・長野県)は衣類のリメーク工房を町内に新設し、30人程度を地元採用する計画だ。「双葉町は原発事故の中心地というマイナスイメージがあったが、これからは違う」と言葉に力を込めた。

 塙さんは23日、就職先となる建設途中の工場前に立った。重機が復興のつち音を上げる。浅野撚糸製タオル「ダキシメテフタバ」を手に取り、思いを口にした。「町外からの移住者と帰還した住民がともに手を取り合えば、双葉は新しい町に生まれ変わる」。

 

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