「声に出せない人の思い伝えていきたい」 福島県いわき市の古滝屋館主の里見さん 旅館内に原子力災害考証館開設
事実を検証する場が地域の未来を考えるために必要と話す里見さん
2022/09/11 10:33
福島県いわき市常磐湯本町の旅館古滝屋館主の里見喜生さん(54)が旅館内に開設した「原子力災害考証館 furusato」が12日で1年半を迎える。「震災から11年が過ぎても苦しみを声に出せない人の思いをくみとり、伝えていきたい」。東日本大震災と東京電力福島第一原発事故を住民目線で考えてもらおうと資料展示やスタディーツアーなどに取り組む。
原発事故発生後、沿岸部の被災地を車で案内するツアーを始めた。2011(平成23)年11月にNPO法人を設立し、活動を本格化させた。故郷を追われたり、家族や友人を失ったりした住民の声を聞いた。「悲惨な歴史を繰り返さないために検証する場が必要」と考えた。
2018年、宴会場の改装を始め、原発事故に関する書籍や資料を集めた。2021(令和3)年3月12日に考証館を開館した。
約400点の資料がある他、ツアー参加者が原発事故について議論する場も設けている。旅行で訪れた来館者から「一番印象に残ったと娘が話していた」との感謝の電話や、「私は声に出せない。作ってくれてありがとう」との声が寄せられた。
里見さんは「一人一人が浜通りで起きていることを知り行動すれば、未来を変えるエネルギーになる。多くの人が訪れ、一緒に考える場にしたい」と願いを込めた。
開館時間は午前10時から午後4時まで。入館無料。問い合わせは古滝屋へ。