福島県・双葉町営住宅「駅西住宅」への入居スタート 復興の加速化に期待膨らむ
2022/10/02 09:49
福島県双葉町が住民らの生活拠点としてJR双葉駅西側に整備した町営住宅「駅西住宅」への入居が1日、始まった。帰還や移住が本格化し、復興の加速化が期待される。いわき市の災害公営住宅で避難生活を送っていた無職松浦トミ子さん(86)は約11年半ぶりに住み慣れたまちでの生活を再開させた。「花を育てたり友人を呼んだりして、大好きな双葉で楽しく過ごしたい」と胸を躍らせる。
「双葉に戻れてうれしい。やっぱり落ち着くなあ」。木のぬくもりが漂う室内に足を踏み入れると、喜びがこみ上げた。家族7人と引っ越し作業をする手に力が入った。
浪江町出身。結婚を機に双葉町に移り、原発事故発生前まで約50年間暮らした。農家として豊かな自然で野菜を育て、近隣住民との間にはいつも笑顔が広がっていた。避難生活中も双葉への思いは消えなかった。「まちの空気や温かい人柄が大好きだった」。帰りたいという願いを抱き続けていた。
駅西住宅の応募が始まると迷わずに申し込んだ。町内には現時点でスーパーや病院はなく、不便な暮らしとなる。それでも「何とかなる」と前向きさが自らを突き動かした。
今後は花を植え、のんびりとした暮らしを楽しむ。新たな近所付き合いも心待ちにする。「みんなが住宅に集まり、原発事故発生前のようなにぎやかな場所にしていきたい」と思い描く。
駅西住宅は8月30日に避難指示が解除された特定復興再生拠点区域内にある。解除から1カ月が経過した9月30日時点で、町内には帰還した住民や町職員ら約30人超が暮らす。
駅西住宅は計86戸を備え、現在も整備が続く。1日から入居できるようになったのは建設を終えたタウンハウス(集合住宅)の25戸。現時点で18戸の入居が決まっており、順次、帰還者や移住者が生活を始める。