「そのとき、どう動けば」 後発地震注意情報 来月運用 福島県浜通り

 

アクアマリンふくしま(中央奥)を前に注意情報発表時の施設運営を思案する古川館長

 

2022/11/09 09:37

 

 日本海溝・千島海溝地震が起きた場合、続いて発生する後発地震への警戒を呼びかける「北海道・三陸沖後発地震注意情報」の運用概要が発表された8日、福島県浜通りの施設関係者や住民からは戸惑いや不安の声が上がった。国は注意情報が出ても事前の避難や経済活動の制限は求めない。施設関係者は利用者らの安全確保に向けた情報伝達や避難誘導の方法などを模索する。「住民の認知度が高まっていない」との指摘もあり、周知強化を求める意見も出た。

 政府は市町村の防災行政無線や交流サイト(SNS)、報道などを通して住民に注意喚起する方針だが、詳細な制度設計はこれからだ。地震や津波への対応は一刻を争う。いわき市小名浜のアクアマリンふくしまの古川健館長は「緊急地震速報と同様にスマートフォンなどに情報は入るのか」と不安を抱く。

 政府は注意情報発表時、企業などに対し建物内などでの避難誘導手順の確認などを要請する。東日本大震災で被災経験がある同館はその教訓を踏まえ、災害発生時やその予兆がある場合、館内放送や避難誘導の訓練などを徹底して備えている。古川館長は「これまでの経験を生かし、来館者や職員の安全確保に努めていきたい」と誓う。

 震災、東京電力福島第1原発事故の被災地の現状を学ぶ「ホープツーリズム」を受け入れる施設も注意情報に関する対応を迫られる。Jヴィレッジ(楢葉・広野町)もその一つだ。ホームページに非常時マニュアルを掲載するなどしているが、新たな対応の検討も必要だ。 ホテル事業部の後藤朋久副部長は「施設として適切な対応を瞬時に判断するのは難しいのではないか。周辺の状況を見ながら、来訪者の安心・安全の確保を第一に考えて対応を講じたい」と語った。

 政府は注意情報発表後も、住民に事前避難を求めない。避難場所・避難経路の確認やすぐに逃げられる服装での就寝、家具の固定などを呼びかける。双葉町の調理師志賀徳子さん(75)=浪江町に避難=は双葉町の自宅が第1原発から5キロ圏内にある。「事前避難を求めないと言うが、原発に何かあったら不安」と心配する。「注意情報を出すのであれば、はっきり避難を促した方が混乱しないのではないか」と疑問を呈した。

 政府は行政区などには要配慮者らへの周知を求める。南相馬市原町区の高平地区区長会長を務める菅野治緒さん(75)は「注意情報は知っているが、どう対応するかはまだ考えていない」と語った。行政と連携を取りながらより良い策を講じる考えだ。

 そもそも注意情報が十分に周知されていないのが現状だ。浜通り最北部にあり震源域に最も近い新地町。同町の農業横山斎一さん(75)は「後発注意情報のことは知らなかった。初めて聞いた」と明かす。

 自宅は海から数百メートルの場所で近くに川の河口もあり、震災の津波では自宅が床上浸水した。横山さんは「運用されることを住民が知らなければ意味がない。周知を強化すべきではないか」と訴えた。

 

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