電気供給に多くの手 斜度調整、熟練の技  東北電力ネットワークの福島県浜通り送電線工事ルポ

 

鉄塔の建設が進む川内村。まだ架線されていない

 

2023/04/05 17:12

 

基礎の斜度はミリ単位の調整が必要になる

 

 東北電力ネットワークが主に福島県の浜通りで建設を進めている東北東京間連系線の2ルート化に向けた送電線工事の現場公開に臨んだ。相馬双葉幹線新ルートは田村市から大熊町、川内村、富岡町までの15・3キロを結ぶ。木々の生い茂る山間地を中心に、高さ約80メートルの鉄塔34基を新設する。東北電力ネットワーク福島支社管内では27年ぶりとなる大規模工事を間近に見て、普段使っている電気に多くの人が関わっているのを実感した。(福島民報社双葉郡統轄兼双葉南支局長・渡部 純)

 東北電力ネットワークの旧富岡サービスセンターから、大熊町の基礎の工事現場に向かった。一般道から、資機材を運ぶために造成した仮設道路に入った。

 鉄塔の脚を支える基礎は逆T基礎と深礎基礎の2種類がある。大熊町は、岩盤の固い箇所が深い場所にあるため深礎基礎を採用。深さ約19メートル、直径3メートル。内部で作業員が柱体の配筋を行っていた。基礎は斜めに据え付ける。斜度はミリ単位で調整しなければならず、作業員の長年の経験と熟練の技術が必要になる。

 川内村の工事現場では、高さメートル78・7メートルの鉄塔を組み立てる作業を近くから見学した。クレーンで腕金(うでがね)をつり上げ、高所で作業員がボルトで締め付けていた。機械化が進んだ中でも最終的には人の手が欠かせない。

 東北電力ネットワークによると、作業員の高齢化が進み、技術の継承が今後の課題になっている。コンクリートや鉄筋などの資材の価格高騰も厳しいという。

 近年、夏場の電力需給の逼迫(ひっぱく)が社会問題となっている。2ルート化が完了すれば、安定供給体制が築かれる。震災・原発事故の発生後、それまでは当たり前だと思っていたことが、当たり前ではないと感じる時がある。普段の生活を見つめ直すきっかけになった。

 

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