夢は100歳 富士登山 福島県いわき市の佐川トメさん 95歳で今夏登頂、女性最高齢を更新
富士山9合目で記念撮影する佐川さん=深町さん提供
2023/10/19 09:39
卓球で体力づくりに励む佐川さん
福島県いわき市常磐藤原町の佐川トメさん(95)は、毎年挑んでいる富士山(3776メートル)の登頂にこの夏も成功し、自らの持つ女性登頂者の最高齢記録を塗り替えた。国内最高峰への登頂は、新型コロナウイルスの感染防止のため全ての登山道が閉鎖された2020(令和2)年を除いて2015(平成27)年から8年連続となった。息子の献身的な支えも力に、「100歳になっても頂に立ちたい」とますます元気だ。
富士山本宮浅間大社は毎年11月、高齢登山者を「富士山高齢登拝者名簿」にまとめている。名簿は数え年で年齢を記している。佐川さんは2018年から昨年まで女性として年間最高齢登頂者となっており、数えで95歳だった2021年に女性の最高齢登頂記録を塗り替えた。富士山の開山は7月から9月中旬まで。同大社は今シーズン、佐川さんより年上の登頂者はなかったとしている。
同居する次男深町梅之亮さん(68)と挑んでいる。今年は登り6泊、下り4泊の行程を組んだ。7月17日に静岡県側の「富士宮ルート」の5合目から登り始め、23日に山頂に到達した。
溶岩質の斜面を登るのは容易でない。佐川さんは梅之亮さんと互いの腰をロープで結び、安全を確保している。酸素の薄まる9合5勺(しゃく)からは小まめに足を止め、呼吸を整えながら進む。頂に立つと「お招きいただいた」と感じるという。下山中には7合目で虹がかかった。雄大な眺望が何よりの楽しみだ。
佐川さんは1927(昭和2)年、いわき市で生まれた。初めての富士登山は37歳のころ。交流のあった富士山写真家の岡田紅陽さん(新潟県)に勧められたのがきっかけで、その後も何回か登った。
87歳だった2014年、胃潰瘍で入院した。苦手な納豆を食べるなど健康づくりに努め、病気を克服した。体調が戻ると、若い頃に目にした霊峰の景色が脳裏によみがえった。翌2015年、高齢の仲間と久しぶりに登り、再び魅了された。
梅之亮さんは「高齢者富士登山案内人」として母親以外の高齢登山者にも随行し、富士登山は通算60回を数える。梅之亮さんは「母は何でもよく食べる」と佐川さんの元気の秘密を明かす。母親の体力を保とうと、梅之亮さんは卓球や体操に毎日付き合う。梅之亮さんが「百人一首」の上の句を読み、佐川さんが下の句をそらんじるなど認知機能の維持にも余念がない。
「登れる所まで登れればいい、と気負わずいると、いつの間にか頂上に着いている」。佐川さんは「登山の極意」を平然と話す。来年8月15日を目標に次の登山計画を練る。てっぺんからの眺めを想像し、トレーニングに励んでいる。