福島県の磐城高演劇部出身の大学生が劇企画 震災、原発事故 語られなかった思いつなぐ 風化、観客と考える機会に

 

試演会に向け台本を確認する(左から)新妻さん、菅波さん、井ノ本さん、村山さん

 

2025/02/12 11:05

 

 磐城高演劇部出身の大学生が、劇を通して東日本大震災と東京電力福島第1原発事故についての語り合いを促す取り組みを始める。多くの福島県民が当時抱いた将来への不安や葛藤など言葉にできなかった気持ちを詩と劇で表現し、観客が心中を言葉にし未来へつなぐきっかけにする。「大きな出来事の陰で語られなかった声に耳を澄ませたい」。12日に東京で試演会を催し、古里いわき市での本公演を目指す。

 出演は主宰・作・演出の新妻野々香さん(21)=早稲田大文化構想学部3年=、こっちゅん(21)=本名・菅波琴音さん、日大芸術学部3年=、村山由莉さん(21)=津田塾大学芸学部3年=、菅野ひなさん(20)=専修大文学部2年=。村山さんの友人で神戸市出身の井ノ本龍樹さん(21)=東京大医学部3年=も演じる。

 新妻さんと菅波さん、村山さんの3人は小学1年で、菅野さんは就学前に被災した。友人同士で震災について語り合う機会はほぼなかった。大切な人を失った人と体験の重さを無意識に比べ当事者になり得ないという思いが強くあったからだ。ただ、全国で災害が頻発する中、新妻さんは「語るに値しないと思っていた経験でも共有すれば参考になるのではないか」と思うようになり、上演を企画した。

 新妻さんは鈴凪薫香の名で詩人として活動している。今年度の県文学賞詩部門奨励賞を受けた「街の灯」などから詩編を選び劇「波にすませて」の台本を仕上げた。詩の朗読と、演者の体験などを背景にした日常の断片劇を繰り返す。

〈これは私の話であり、過去の、未来の誰かの話 みなさんの話を聞かせてください〉

 菅波さんは「記憶、震災の風化という変化にどう向き合うか、一緒に考える機会になればいい」と願う。

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 試演会は12日午後3時と午後6時から、東京都の早稲田小劇場どらま館劇場で開かれる。観覧料金は500円。

 

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